第89話

「それじゃあ、朝倉委員長はいったい何を心配しているんですか?」


 きみどりさんは、そうですね…と考え込む仕草をして、


「美術館という施設がありますね。ああいった建物は、入り口などに施錠するための鍵が付いているでしょう?本来ならそれだけでも十分だと思いますが、夜間に警備員を常駐させているところもありますね。なぜでしょう?」


 質問を質問で返すなという言葉が一瞬頭に浮かんだが、そこまで難しい話でもなかったので俺は答えた。


「そりゃ、万が一にも盗まれたり壊されたら取り返しがつかないか…ら…?」


 なんてこった。これじゃあまるで…。自分で言ってて、自意識が過剰すぎるんじゃないかという答えが浮かんだ。きっと、また俺は、何か間違えているんだ。


「まさかとは思いますが、朝倉委員長にとって俺は美術品的な価値が」


 俺の言葉を遮るようにきみどりさんは首を横に振った。そして、あっさりと解答を言った。


「異星人との恋。興味深いですね。理解は出来ませんけど」

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