第16話
「時間というものは連続性のある流れのようなものでなく、その時間ごとに区切られた一つの平面を積み重ねたものなんです」
あ、あの…。
「時間と時間との間には断絶があるの。それは限りなくゼロに近い断絶だけど。だから時間と時間には本質的に連続性がない」
えっと…。
「時間移動は積み重なった時間平面を三次元方向に異動すること。未来から来たわたしは、この時代の時間平面上では、パラパラマンガの途中に描かれた余計な絵みたいなもの」
「…あ!マンガと言えば、みくるさんはどんなマンガが好きですか?あと、未来でもドラ〇もんとかって人気だったりしますか!?」
「時間は連続してないから、仮にわたしがこの時代で歴史を改変しようとしても、未来にそれは反映されません。この時間平面上のことだけで終わってしまう。何百ページもあるパラパラマンガの一部に余計な落書きをしても、ストーリーは変わらないでしょう?」
「あの…あの、さっきから仰ってることって、わたくしめのような者が聞いてしまっても大丈夫な内容でありますでしょうか…?」
感情を失ったように淡々と話すみくるさんに恐る恐る尋ねてみる。みくるさんはそれには答えず、俺から視線を外して遠くを見るようにして、
「時間はあの川みたいにアナログじゃないの。その一瞬ごとに時間平面が積み重なったデジタルな現象なの。解ってくれたかな」
と確認してきた。いや、全然分からないですし。あの川って言われても俺の目には川なんて見えない。状況的には俺に見えかけているのは三途の川では?俺がどうしようどうしようとオロオロしていると、
「わたしがこの時間平面に来た理由はね……」
などとみくるさんは言い始めた。
「ストップ!ストーップ!!!駄目!それ以上は本当駄目なやつですって!!!それって最後まで聞いたあとに『お前は知りすぎた』とか言って消されるやつですって!!!」
もしかしたら未来人ジョークなのかなと最初こそ思ったけど、みくるさんの目が、養豚場のブタでもみるかのように冷たい目だった。『かわいそうだけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね』ってかんじの。もはやこの状況下において、俺に残された策は、たったひとつしかない!
「ごめんなさい!調子に乗りました!命だけは勘弁してください!!!」
土下座した。それはもう全力で。だって逃げたところで未来人だし絶対先回りしてそうだし。許してください…。
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