第15話

 みくるさんは俺が持っていた指示書を受け取ると、1つ目にあった『涼宮ハルヒの髪の長さを短くさせる(ゴールデンウィーク明け)』という項目の頭に花丸を付けた。


「よかった…もうだめかもしれないって……(ぐしゅ)目を瞑って、祈っていた甲斐が」


 感極まって泣き出したみくるさんがなにやら聞き捨てならないことを仰っている気がしたが、俺はポケットやら鞄やらをひっくり返していてそれどころではない。無い。やっぱり無い。涼宮の髪を自発的に切らせるために書いた歯の浮くような内容の便箋が、どこにもなかった。あんなものが他人の目に入ろうものなら、俺は最低でも三日間は意識不明で入院する自信があるね。


「……まあいっか」


 そうはいっても、万が一誰かが拾ったとしてもだ。俺がその便箋を落した瞬間を見られていなければ、俺が書いたかまでわかるはずもない。


「(ぐしゅ)…じゃあ、次の行動に移りましょう!」


「その前にみくるさん、約束が先ですよ」


 みくるさんはあからさまにギクッと肩をこわばらせた。


「えっ、なっナンノコトデスか~?」


 目が泳ぎまくっていた。いやだなー忘れてもらっちゃ。タ・イ・ム・マ・シ・ンですよ。


「あ、うん。そう、そうよね…」


 みくるさんは今度は眉毛をハの字にして弱ったなぁという表情をした。実際そうなのだろう。未来人がみんなそうなのか分からないが、みくるさんは喜怒哀楽がストレートに顔に出るらしかった。ただ、ここでみくるさんをあまり困らせすぎると、これ以降の手伝いを別の人間に頼むかもしれない。それだけは避けなければならない。そこで俺は、全くの善意から、助け舟を出すことにした。


「いいですよ、別に。今すぐ教えてくれなくっても、あとで教えてくれるって言うんならその時でも俺は全然。ただ、その、今教えてくれないのなら、今回頑張った見返りに、ほっぺにチュウくらいしていただけると嬉し」


「タイムプレーンデストロイドデバイスです」


 みくるさんが語り始めた。

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