第36話 5年後の約束
なんともアホらしい飢饉になりそうな理由にツッコミをいれて__
なに?私が人を騙してる?嘘はついてないよ、なんにも私は嘘を言ってない。単にちょっとしたことをミスリードしただけ。
ルークルーズで開かれたささやかな歓迎の宴に適当に笑って、ようやく帰れる。
今日一番の笑顔でルークルーズ市長に手を振る。
さようなら、ルークルーズ。
ちゃんと先人達に学ぶのよ!
「フローラ」
「なにかしら、私はきちんと誤魔化したわ」
レオンもこの年齢で私に付けられるぐらいには有能な子どもだから、あの場で大人にやんわりと示したことに気がついたらしい。
なんでもできるフローラちゃんではレオンもやる気がでないでしょう?
妙なところで抜けていて隙があるフローラのことを守らねばと心に決めておいてちょうだい。
今回のルークルーズ
1つは飢饉を回避、もう1つは棚ぼただがレオンとの仲を深めた。
着実な成功を積み上げて、最低な未来を回避!
まあまあな成果だろう。
この調子で5年を過ごせば殺されたり、放逐されたりせずに済みそうだ。
「フローラはその…あれが見えるの?」
「あれって何かしら」
「精霊様のこと」
周囲を伺いながらレオンは言うが、恐らく馬車の中にレオンがいて何か起こると思ってないから流石のエリアスも聞き耳立ててないと思うわ。
「レオンには見えるの?」
「俺にはそこまで、魔力がない」
「…そう、私も見えないわよ」
「え?見えないの?」
レオンはきっと私について知ろうとする人が最も近づこうとするに違いない。判断が微妙になる言葉をしっかりと挟んでおこう。
「私ね、后にはなりたくないのよ。自由に生きたいの。自由に生きて好きなように楽しんで、年老いて死んでいきたい」
「……それでも、あなたは領民のために行動された」
「巡り巡って私のためよ。麦の一大産地がなくなってしまったらラングレー領で食事に困るじゃない」
そしてお腹を空かせて暴走した領民に殺されるエンドが有り得たのだ。
他に領地にいるうちにつんでおきたい芽は浪費と国境の安全だ。
城の防衛について私から口出しは、とりあえず商人の件から片付けて、浪費については予算や支出について見て地道にやるしかない。
「どうしたの?レオン」
「フローラなら知っているかもしれないけど、騎士には『唯一の主』という契約魔法がある」
「へえ、騎士じゃないから知らなかったわ」
実のところ既に騎士ルークのルートでガッツリ出てくるから知っているが、ゲームとこの世界はよく似ているが同一ではないのでレオンに聞く。
最たる違いは私とかね。
設定でいけば、今頃の私は庶民嫌いで癇癪を起こして、魔法を爆発させている頃合いだ。
「ずっとそんな契約なんてない方がいいと思ってた」
「そう、レオンがそう思うのならあまりいいものではないのね」
「いいえ、悪用される一面があるだけで、もし…この方だけはという相手がいるなら騎士の本懐でしょう」
唯一の主の契約は主となる誰かと騎士との間で結ばれる。双方の同意の上の契約だが、結んだら同意がない限り切ることができない。
騎士は主のことを守る、時に意志に反していても主を害するのとはできない。
主は騎士に魔力を供給できる、騎士が望めば生命維持のギリギリまで魔力を騎士に使われることがある。
基本は主が貴族以上で魔力が膨大にあることを想定した契約だ。
もちろん騎士ルークはこの契約によって振り回される。
悪い貴族に幼い頃のルークが結ばされて…というありきたりな内容だ。
レオンが言う悪用のパターンそのもの、ヒロインとルークの間に愛の力がないとルークがヒロインを殺してしまうバッドエンドになる。
「唯一の主という契約は、主と騎士で結ばれる契約です。主は魔力を、騎士はその忠誠を、お互い唯一の者と認めて、魔法で契約すると発動する。
主は騎士が望むときに魔力を騎士に渡す必要があり、騎士は主を害することができなくなる。そして、主の危機を探知できるようになる」
「危機を探知?」
ほーら、やはり私の知らない側面があった。
ルークは貴族からの呪縛からどう逃れるかが主題で、その契約を存分に活用していたとはいえない。
「直感のようなもので、主に危険が迫ると契約を結んだ騎士は離れた場所にいてもわかるようになる。必ず守りたいと思う相手ができたなら、有効だとようやくわかった」
それはすごくいい。
このままレオンには騎士として成長して貰って、私に入れ込んで貰えば、家族よりも比重を私に置いてもらえるかもしれない。
それに危機を察知なんて、なんて便利、どこぞの警備会社もびっくりよ。
「フローラさま、俺はまだまだ未熟で、頼りないと思う。だから5年、5年待って欲しい。
あなたの唯一の騎士をあけて待っていていただけませんか」
相手が反則イケメンでなくてもこんなセリフ言われたらドキッとするわ。
まあ相手はお子ちゃまなのが、残念ではあるがお子ちゃまかつモブですらこのクオリティ、恐ろしい限りだ。
真っ直ぐに私を見るレオンの視線を真っ向から受ける。
戦闘系ファンタジーに足を突っ込んだかと錯覚したけど、やはり恋愛系は付き物のようで安心した。
「レオンの気が変わってなければ、5年後にね」
持て余している魔力を有効に使って私のことを警備してくれるなら願ったり叶ったりよ。
ニヤリと品なく笑う笑みを浮かべないように、ちょっと照れたように頬を挟むようにはにかんで笑った。
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