第31話 兵站は生命線

それは衝撃的な事実だった。

国境を守る主要な用地の兵站をまさか他国の商人が担ってるなんて、兵站の重要性を理解してないの誰だ。


目の前のムーンフィストから来た商人事態は悪くない、物もいいし、質もいい、でも兵站を任せるのはダメだ。

後でアントンに言って国内の商人も召喚してもしもに備えてもらおう。


国内と言わずできれば領内から出して欲しい。有事の際にこの城と運命を共にするのはラングレー領内の領民だ。

要は兵士に食べ物を与えないと自分たちが困るラングレーの城と騎士団と、一蓮托生の人たちでないと困るのだ。



「フローラ様、こちらのお菓子はいかがでしょう?」



そう言ってアントンが出してくるお菓子にはお砂糖で色付けされた可愛らしいクッキーだ。

お菓子や装飾品等の贅沢品は他国から購入でも構わない。

この商人にすると決めた人が顔を立てないといけない相手、例えば現在の領主とかだった場合はこういう特産物系を残してもらおう。


そう割り切って特産物系を見ていく。

うんうん、王都に売り捌けそうな装飾品やお菓子がたくさんある。



「可愛らしくて良いと思うわ」



色々と思うことはあるが、見栄は必要だ。

「私、可愛いお菓子でしょ!」と全力でアピールしてくるお菓子はあまり好きではないが、にっこり笑った。


私のわがままで変更したと思われないような工夫が必要だから愛想を振りまかないといけない。

あまり好きではない装飾品とお菓子を購入し、すぐに視察に行くからそのときの世話人の街人にでも下賜すればいい、その笑顔のまま商人たちを送り出す。


よし!可愛いものを買って上機嫌なお子ちゃまを演出できただろう。


私の荷物をまとめてくれるメイドにお願いして荷物にしまってもらう。メイドにもついでにクッキーをあげた。私の好みでないだけでやはりこういう砂糖色付けのお菓子等は人気らしい。


ムーンフィストからの商人が帰って、すぐにアントンと補給係の責任者を呼んだ。



「ここの砦は国の護りの要所でしょう?補給、つまり兵站を他国に任せている状態はよくないと思うのだけれど、どうかしら?」

「わたくしも常々…」



アントンが嬉しそうによく指摘してくれましたと言わんばかりの間髪入れない対応で、それでいて言葉は歯切れ悪く同意してくれた。

そうなるとアントンが逆らえない誰が無理矢理にあの商人をお抱えにしたのだと推測される。



「アレをお抱えの商人にするように言ったのは誰?」

「奥様でございます」



おっと、私が感情的になってもいいワードが出現した。あえて眉間に皺を寄せてため息をついた。



「今の奥様はムーンフィストの人なの?」

「元々そちらの方と聞いております…その、貴族位の方ではありませんので、血筋等は不確かでして」



完全に内通者がいるじゃないの。


今度は本気でゲンナリとため息をついた。

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