第7話 修道院は天使の集いですか。

神を大して信じていない私でも思わず感嘆のため息をついてしまうほどに美しい。

女神を模した像と女神がいらっしゃる楽園を模したステンドグラスは教会の格式を引き上げる。

形式通りに女神像に両手を合わせて祈りをささげた。


幸福幸福幸福幸福幸福幸福…。


幸福を願うなら何時間だって足りないだろうけれど、祈る以外に努力をしないことには意味がない。

祈るだけで救われるなら世界中の人が王子様、お姫様になれる。

現実はそんなに甘くない。


そう思って立ち上がってあたりを見渡したところで、顔が引きつりそうになった。



「ねえ、きみ、新入り?」

「こら、だめだよ、エル」



黒髪の美童と白髪の美童が、私のことを見ていた。場所が場所なだけに天使のようにも思えるが、私はフランクさんのおかげで天国に足は突っ込まなかった。

彼らは現実だ。



「はい、初めまして。クロリスといいます」

「そっか。俺はエル、よろしく」

「僕はマルク」



これだけの美童が何人もいてたまるかと思ったのは当然だった。


神官マルク、出会うの早かったな。

もう一人の美童は、おそらく黒髪だし、エルということは世を忍ぶ第3皇子だろうか。


ヒロインとぎくしゃくしたくないし、できれば攻略メンズとは関わりたくはないけれど、クロリスである今なら問題ないだろう。



「1年だけど、よろしくお願いします。先輩」

「奇遇だね、俺も2年なんだ」

「ふふ、本当に先輩だ」



そう話しているうちに指導役の修道士が現れ、新たな生活が始まることになった。


朝起きて、掃除をして、ご飯を食べて、勉強をして、ご飯を食べて、体を動かして、ご飯を食べて、祈りをささげて眠る。


素晴らしく健康的で実りのある生活時間割を聞いて、修道士に微笑んだ。



「クロリス、きみのことは少しだけ聞いていてね。週に一回はお医者様に見てもらうことになっているから」

「はい、お気遣いありがとうございます」



少ない荷物をもって、修道服とかはこちらで用意してもらっているから下着類等だけが入っている、特別に個室にしてくれた部屋まで案内をしてもらった。



「あなたに御加護があらんことを」

「天使が微笑まれますように」



決まり文句を返すと案内をしてくれた修道士は部屋をでていったのだが、すぐに来客があった。

夜の自由時間に確かに自由にしているみたいだ。



「クロリス、クロリス、クロリスも貴族?」

「エル、だめだよ、聞いたら」

「神の御許である修道院に身分はないと聞いてますよ、エル」

「ちぇ、かったい」

「しーっ」



二人の戯れは攻略キャラ同士ということもあって、何をしていてもスチルのようだ。

見ていてまぶしい。

目の保養だが、まぶしくてちょっと目に毒だ。



「クロリスの髪、綺麗な銀色だね」

「マルクこそ、神の愛した色で美しいよ」



なに、この子達、デフォルトで人を口説きにくるとか。

それも五歳で。

どうなってんだ。

どういう教育したらそうなるの。


明日からを想像してちょっとだけため息の代わりに微妙な笑顔を浮かべた。

絶対、心臓に悪い。

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