まいちゃんと、幸せな猫たち



まいちゃんはとても面倒見の良い女の子です。


というのも、女の子ばかり三姉妹の長女として頼りない二番目とワガママな末っ子を、ときに叱り、ときに褒めて暮らしていたからです。


そうして育ったまいちゃんが大人になり、

まいちゃんの二人の妹も大人になり、

三姉妹離れて暮らすようになった頃。

妹達から頼られることが少なくなって、ちょっぴり淋しくなっていたまいちゃんの元に、一匹の猫が現れました。



その猫はとても小さく、弱々しく、ボロボロで、どうやらひとりぼっち捨てられてしまったようで、まいちゃんが撫でてあげても「にー」と、か細く鳴くばかりでした。


まいちゃんは急いでその猫を動物病院に連れて行きました。

その猫は重い風邪をひいていたので、まいちゃんはお家に連れて帰ってたくさん看病しました。


するとその猫はみるみる元気になり、1ヶ月後には輝くばかりの栗毛をなびかせていました。そしてまいちゃんに「ありがとう」と鼻キスをしました。

まいちゃんはその猫をまいちゃんちの子にする事を決めました。

まいちゃんはその猫に「アーサー」という名前をあげました。

まいちゃんとアーサーくんはとても仲良く楽しく暮らしました。




そして、アーサーくんが大人になったある日の朝。


まいちゃんがお家の玄関を開けるとそこに二匹の小さな猫がいました。

その猫たちはとてもボロボロでした。

毛並みはあちらこちらに乱れ、鼻は詰まって息がしづらそうで、目の周りが腫れ上がってしまい前が見えていないようでした。

まいちゃんはすぐにその子たちを動物病院に連れて行きました。


動物病院で注射をしてもらった後、行く宛の無いであろう二匹の猫を抱えたまいちゃんは困ってしまいました。


まいちゃんの家にはアーサーくんが居ます。

もしもこの子たちとアーサーくんがケンカをしたら体の大きなアーサーくんのほうが強いに決まっています。


まいちゃんは病気が治ったら二匹の猫には新しい飼い主さんを探してあげようと思いました。

だから二匹の猫には愛着を持たないように、まいちゃんの二人の妹の名前を仮で付けました。「なっちゃん」と「あいちゃん」

まいちゃんは家に帰るとアーサーくんのいる部屋とは別の部屋になっちゃんとあいちゃんを迎えました。

そして、まいちゃんの必死の看病でなっちゃんとあいちゃんはみるみる元気になっていきました。



なっちゃんとあいちゃんが元気になったある日、まいちゃんに驚くべき出来事がおこりました。



すっかり元気になったなっちゃんとあいちゃんが部屋を走り回っていた時、偶然アーサーくんのいる部屋に入ってしまったのです。



小さななっちゃんとあいちゃんは驚いて、しばらくアーサーくんを見つめたあと、思い切りアーサーくんに噛みつきました。

しかし、アーサーくんは何も言いません。

面倒見のいいまいちゃんに育てられたアーサーくんは二匹の子猫をとても大切にしました。

体を舐め、エサを譲り、一緒に遊ぶときは適度に負けてやりました。

なっちゃんとあいちゃんはアーサーくんのことが大好きになりました。


それを見たまいちゃんは三匹を一緒に飼うことにしました。

まいちゃんと三匹の猫の楽しい生活が始まりました。







それから数年後、

アーサーくんが病気になってしまいました。



まいちゃんはまたたくさん看病しましたが、アーサーくんは天国へと旅立ってしまいました。



まいちゃんはとても泣きました。



「私がもっとしっかり看病してあげられていたら」

「もっともっと楽しい時間を一緒に過ごしたかったのに」

「アーサーくんはうちの子になって本当に幸せだったんだろうか」


考えても考えてもキリが無い、答えの無いことを考え続けてしまいます。


そんなまいちゃんをなぐさめたのは、なっちゃんとあいちゃんでした。


二匹ともアーサーくんが大好きだったのでとても淋しくて仕方ありませんでしたが、まいちゃんがアーサーくんを想って悲しい顔をしていると、天国のアーサーくんも悲しい顔をしてしまうような気がして、二匹はまいちゃんをずっと励まし続けました。


その頑張りが実を結び、まいちゃんは少しずつ元気を取り戻しました。








運命は巡り、ある日のこと。




妹の引越しを手伝っていたまいちゃんの元に三度ボロボロの猫が現れました。

その猫も酷く病気をしていて、まいちゃんと出会うのがあと少し遅かったら...と動物病院のお医者さんに言われる程でした。


汚れにまみれていたその猫を看病し、病気が治ったところでお風呂に入れてあげたまいちゃんはとてもびっくりしました。


その猫は輝くばかりの栗毛の子で、アーサーくんにそっくりだったからです。


なっちゃんもあいちゃんもこれにはびっくり!


でも、アーサーくんに似たその小さな猫は捨てられていた事でとても凶暴で、なっちゃんやあいちゃんに容赦なく噛みつきました。

しかし、なっちゃんもあいちゃんも何も言いません。

アーサーくんが二匹にしてくれたように、なっちゃんもあいちゃんも栗毛のその小さな猫をとても大切にしました。


しばらくするとその栗毛の猫も

「ここは安全なんだ。みんな優しいんだ。ここは、僕のお家なんだ!」

とわかり、三匹はとても仲良くなりました。

まいちゃんは栗毛のその猫に「クリ」と名付け、まいちゃんと三匹は楽しく暮らし始めました。





しかし、まいちゃんと猫たちの出会いはこれで終わりませんでした。



またしばらくすると、まいちゃんの目の前に四度病気の猫が現れ、まいちゃんはその子をまた看病しました。


もしかして天国でアーサーくんが猫たちに

「何か困ったことがあったら、まいちゃんのところに行け。幸せになれるぞ」

と言って紹介してるんじゃないかと思うくらい、まいちゃんの目の前には病気の子猫が現れました。

まいちゃんはその度に看病をし、どんどん家族が増えていったのです。




そして、まいちゃんちの猫で、天国へのお引越しを決めた子もいました。


あいちゃんです。


あいちゃんは眠るように最期までずっとまいちゃんのそばにいました。



まいちゃんは泣きました。

たくさんたくさん泣きました。



それから、天国のあいちゃんとアーサーくんにこう言いました。



「もしも生まれ変わることがあって、その時また猫になったら。...必ずまたうちにおいで。天国から見て、困っている猫がいたら、うちへ行きなと言ってあげて。あなたたちがうちへ来てくれて私は最高に幸せだったから。何度巡っても、必ずまた、うちにおいで。」



まいちゃんはそういうと、空に向かって笑いました。


天国のみんなも、笑ってくれた気がしました。






「まいちゃんと、幸せな猫たち」

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