叶えたくて

「ま、いいや。それよりさ……──」


悪いとは思っていないらしい。


「なんだよ? 」


諦めて溜息をつく大吾くん。


「そろそろのサンタにプレゼント頼まなきゃじゃん? 」


イマドキの小学生は、現実思考というか、ちゃっかりさんが多い。

サンタさんはいない、親が子どもを喜ばせる日だなんて思っている人は少くない。


「おまえら何頼むよ? 俺、NEOGEOmini!

しかもクリスマス版があってさー。マジゲーマーなら持ってて損ないっしょ! 」


彼はゲーマーと言っているけれど、ただ目新しいものが好きなだけ。

NEOGEOが何だかも分かっていない。

強くもないと大吾くんが前に漏らしていた。


今日はまだ、11月1日。クリスマスまで2ヶ月近くある。


「夢壊すなよ。本当にサンタクロース家業してる人に失礼だろ。んー。何貰えるかわかんないからって楽しみのが先立つな」

「イマドキ選び放題なんだから、指定した方が用意する方も楽じゃん」

「おまえは高いの望みすぎ。選ぶ楽しさってあんじゃん。誕生日に友だち同士なのにおなじように要求すんのかよ? 」

「は? 大人は金持ってるんだからいいじゃん。大吾はいいや、翔琉はどうよ? アニメ好きだから高画質プレーヤーとかか? 」


一瞬間があった。


「オレは……──


教室が静まり返った。

わたしは……

またアニメでキャロルを見たいんだと。

胸が締めつけられる。

わたしがキャロルなんだよって叫びたかった。


「……は? 意味わかんないんだけど。2次元だろ? 」


バカにしたように笑う。


「和己、やめろよ」

「いや、いいよ。説明が足りなかったのはオレだから。正確にはんだ」


━━どくん……──。


「すめらぎみかさ? ……ああ、キャロルの声優だっけ? どこぞのおばはんだろ? 」


声優は声だけでは年齢は伺いしれないけど、わたしはあなたと同い年だよ。


「いや、何見てものままなのはおかしい。子役の線も考えたけど、

「それが『聖天使セイントアンジュキャロル』? 」

「もしかしたら……なんじゃないかって」

「だとしてもゲーノージンじゃん。ムリムリ、諦めろって」


それきり翔琉くんは黙ってしまった。


──叶えたい。


わたしはそう、思ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る