第9話 呼ばれてないけど、久しぶりに「僕」登場 



本当に長い道のりだった。真司さんと僕は国道から大きく外れると、どんどん人気のなさそうな方向へと歩いて行った。僕たちはボロボロにはがれた道路を一歩一歩進んでいった。


「あの、いまからバーベキューをするんですか?」と僕がくたびれた声で言った。


「ああ。」真司さんは答えた。


「一人でですか?」


「そうだ。」


「それなら、僕もご一緒させてもらえませんか?」


「だめだ。」


彼は即答した。




それならなぜこの重い荷物を持たされなくてはならないのだ。


「あの、真司さん。この先にバーベキュー場なんてありませんよ。」


「バーベキューは、バーベキュー場じゃなくてもできる。」


そのセリフは、どこかで聞いたことがあるような気がした。でも、どこで誰からきいたのかは思い出せなかった。僕たちはダラダラと続く坂道を歩き続けた。




歩き始めて3時間ほどたったところで、真司さんは「もし帰りたかったら、いつでも荷物を置いて帰ってくれていい。悪かったな。」と言った。おそらくそろそろ到着で、ここからは自分ひとりで荷物を運べるということなのだろう、と僕は推察した。なんとなく、僕が最後までついていかないことを期待しているようでもあった。


「大丈夫です。最後まで行けます。」僕は彼の期待を裏切った。




たまに通る車がいぶかしげにこちらを眺めていた。時刻は12時をを廻っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る