第7話 目醒めの時間(cod)

ジェイクは石段の影に伏せたまま息を殺していた。

「オーマイガッ ナタスよどこへいってしまうんじゃ」

MCカマーはナタスを担いで歩き出した。ジェイクが尾行するとそこは町はずれにある宿屋だった。



ジェイクは暫く見張っていたがしびれを切らし宿屋に突入した。

「おい、今派手な黄色のジャケットのカマ男が来なかったか?」

ジェイクは抜かりなくカウンターにコインを積む。


「あちらからお一人で出ていかれました。」


更にコイン積み上げる。


「怪我をした青年はどこだ?」


「部屋ですがお客様の許可なく開けることは出来ません。」


ジェイクは軽く礼をするとすぐに宿を出た。




ジェイクは黄色ジャケットの男を完全に見失っていると建物の影に隠れるニーニを見つける。


「じっちゃんこっちきて!。」


ニーニはあれから監視して、貼り紙に興味をもった人物に声をかけて回っていたところ、あの黄色ジャケットの男が貼り紙を全部剥がした後、酒場に入っていったのを見たそうだ。


「ナタスはどうしたの?」


「無事じゃ、あのジャケットの男と戦って怪我をさせられたがどういうわけか宿に運ばれて寝ている。感だが悪いやつじゃない。」


暫くすると黄色ジャケットの男が出てきた。


「はあーー 1日の終わり夕焼、空へ導くアチキの前に見えぬ人影はない!隠れても無駄よ!SOKOのYOU!」


気づくとジェイクたちの背後にはおカマがいた。ジェイクはビビって声も出なかった。


「うわっ!」



「そんなにビビらなくてokさっき拾った好青年ならアチキのベッドで寝てる。あんたにケツ付けられてるのも知ってる。来るなら一緒に来な!」


あまりの気迫で二人とも黙って後を追った。

宿に着くとニーニはナタスの右手に触れる。


「ナタスと何があったんですか?」


「アチキはギルドの命令で番人をやっていたの。アチキ強すぎるから大概は最初の一撃で終わると思ってたらあの子が諦めないから、本気でやり合って怪我させちゃった。だから仕方なく連れてきたのよ。」


「あんたわざとでしよこのカマ野郎!」


「うるさいわね小生意気なガキが!アチキ七転び八起き諦めないわ!」


ジェイクが立ち上がった。


「手の形も綺麗だが心配じゃ、知り合いの医者を呼んできても良いかね?」


この段階でMCカマーが相当な脳筋だったため医者を呼んでいないことに気づき、無言で頷いた。脳筋ゆえにニーニがエルフであることも気づかれなかったのは幸いである。


「あのさ、さっき貼り紙とってたけど興味ない?」


「アチキギルドだからね、見過ごせないのよ。見なかったことにしなさい!」


ニーニはこの状況に慣れていた。大概のギルドは名前を言えば従うのだ。


「そういえばまだ名前聞いてないけどほんとにカマーでいいの?」


「うるさいわね!MCカマーと呼びなさい。あんたは何て呼んだらいいの?」


「ニーニって呼んでね。」


ここまでは順調だった。



「あら、アチキの相棒と同じ名前ね!覚えやすくて助かるわ。」


なにーー!?相方が同名だと!?


ニーニは本物のにーにのことも噂には聞いていた。なんとにーにはギルドで最年少にしてナンバー2に選ばれた魔法少女なのだ。

そしてMCカマーはその相棒であり、かつて魔王と戦った英雄であった。


「まさか、貴方がベストショット・カマー!?」


「アチキが12年前魔王に風穴を開けた時の名前ね。元魔王クリスティンが討ち取られて奴が油断した隙に食らわしたけど、結局王の怒りにアチキは負けた。下等な魔王の魔法を食らってアチキの腕は蛆虫に変えられて、失う恐怖に屈し誓わされた契約。けど2年前にーににアチキは救われた。そして思い出したのよ12年前あの日奪われた自由を、見失った自分を。」



>>

12年前元魔王(クリスティン)軍の幹部だったカマーは当時、ベストショット・カマーの名で知られていた。

クリスティンの作戦は〝私の合図で攻撃しろ〟それだけであった。


「クリスティン!貴様の時代は今日で終いだ!

これからは俺の時代!支配下全てが俺次第!」


「ふんっ!そんな柔なパンチラインじゃ刺さらないぜ!

なびかない旗に冷たい風 終身刑の囚人にハメる手枷

捻くれたバベルの塔に報いを 生意気な餓鬼にオヤジの雷!」


気温が急激に下がって静まるとレオンも反撃に出る。


「避雷針・逆十字ペテロ


クリスティンに幻影のペテロが突き刺さるとレオンの頭上から落ちた雷がクリスティンの方へ逸れ、クリスティンの反射魔法を軽く突き破る。


「ぬわあああ」


レオンは容赦なく、クリスティンの反射魔法が解けている隙にとどめの一撃を刺した。


「煉獄・紅鼠イグニス


大気を焼き切る程の業火がクリスティンの体を消していく…

だがクリスティンにはまだ切り札があった。


「checkしときな」


死に際の合図で、燃え尽きるクリスティンを背にカマーは走り出した。


「ふははははは!これでおれが魔王だ!」


レオンは完全に油断していた。時空間魔法並の速度で走り回るカマーはレオンを捉えた。


「check it out yo!《チェケラッチョ》」

<<


「アチキも勝ったと思って油断してたわ。レオンは魔法で防御を張っていた。生身でレオンに触れると、触れた対象を蛆虫に変える魔法にかけられてアチキの腕は崩れ落ちた。」


改めてカマーの腕を見ると右腕の付け根にミミズ割れのような跡がある。


「その腕はどうなってるの?あと魔王は死ななかったの?」


「一生魔王の下僕として付き従うという誓約と引き換えに腕を戻してもらったわ。魔王もまた、己になんらかの誓約を背負ったはずよ。」


魔王レオンの手下でありながら討伐を目論むナタスを赦した?そんなことがあるだろうか。


「あの貼り紙も私たちも見逃す気はないってことかしら」


「あんたみたいな餓鬼に用は無いわ!アチキはにーにに会って変わったの!アチキには相棒が、誓約を解いてくれた神様がいるのよ。」



ナタスが飛び起きる。実は起きていて、カマーの武勇伝をほぼ全て聞いていたのだ。

「ふははははは!道理で強かった訳だ。誓約から放たれたのなら仲間にならないか?一緒に魔王を殺そう。」


「威勢の良いクソガキだねえ。アチキにはにーにっていう相棒がいるから他の奴と組む気はないのよ。まあでも…」


「ギルドにさえなれば俺様の仲間だよな?」


「そ、、あ、アチキより先に言うんじゃないわよ!」


達観フィソロフィー


ハイレベルな戦闘を経験したナタスは意思伝達のレベルが上がり、頭で考えていることを先読み出来るようになっていた。

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