第6話 番人は日替わり当番制 (代打cod)
銀髪の女と目が合う。
「貴方が魔王討伐の貼り紙を貼った馬鹿かしら。」
「ああ、俺様がナタスだ。馬鹿は余計だがな!」
銀髪の女は目を背けた。尖った耳をしている。
「貴様エルフか!」
「え!?どうして分かったの?まだ14なのに!」
どうやらエルフはこちらの世界でも共通らしい。
「耳が尖っているからエルフだろ馬鹿が。」
「どこ見てんのよ!この変態!エルフ言うな!追われてるんだから黙りなさい!」
待て待て、こっちは意思伝達使ってるから大声出してるのはそっちの方なんだよな。しかも追われてるってどういうことだ?
「分かった!うるさいから黙れ。何から追われているんだ?」
「ギルド。私ハーフエルフだから生まれつき魔法が宿ってるの。名前はニーニでいいわ。」
「俺様と同じ天才魔法優良児じゃないか!仲良くやろうぜ!なんでエルフだと追われるんだ?」
「この土地に住むエルフは太古の昔、西の山岳を越えてきたと言い伝えがあって、今じゃ山岳すら跡形もないんだけど、20年前に現魔王が現れるまでは何事もなく普通の暮らしを送っていた。けどあいつらは魔法に長けたエルフ族を恐れて殲滅した。
私はハーフだから人間に育てられたんだけど、その母親も反逆の罪で捕えられた。もし生きてたら私が助けてあげるんだ!」
「そんなことがあったのか、ギルドまでもが魔王の手先だったとは!」
「ギルドは悪い人ばかりじゃない、過激派がごく少数いるだけで表向きは中立しつつ治安の維持には貢献している。でも私は捕まっている場合じゃない。」
「そうか、とりあえずおれは番人を探しにいってくるから14の貴様は引き続き募集を頼む。」
「丸投げかよ!」
「まあ、落ち着いてからでいいぞ」
昼過ぎ、村中央の青い石畳の上、時が来るのを待っていた。もう約束の時間はとうに過ぎているというのに。
「なあジェーク、本当にここで待ってりゃ来るんだろうな?」
「大丈夫だ、見ろあの男。」
なんの変哲も無い小屋の中からハイカラなファッションの男が出てきた。
「よく寝過ぎたわ、朝日が眩しいぜ yo
着こなす黄のジャケットで登場、ビシッと決めるシルエット
ベストショット意識するチェケラッチョ
heyおかしな奴と見間違うなよ!
そこの坊主に食らわすバース
速攻繰り出す! K・O のポーズで
魅了する画に聴衆は釘付けー
アチキはモナリザ!yeah!」
「なんだそのリズミカルな喋り方は!遅れてきて調子乗ってんなよ」
「なめんじゃ無いわよお洒落なアチキはMCカマー」
MC.カマー ランクS ギルドの刺客!
タタタタタタタタ
身長100cm程の女の子が走ってきた。
にーに ランクSS ギルドの考古学者!
「只今よりぃギルドコウチキのランク戦をはじめまちゅ」
「なんだ貴様は!」
「私がチケン監督でちゅよ!手出しゲンキンでちゅからね!」
試験監督か、益々やりづらくなったな。
「まあ待て、遅刻したのは悪かったが早まった真似はするなよ?
その日会ったら挨拶は握手 それがアチキ流のルール♪手を取ったらbattle start Yo!」
ナタスは怒りに任せカマラッパーの手を握ったがその時点で勝負は決した。カマラッパーは小学生が力比べする時に使うアレを仕掛けてきたのだ…
「フンッ!!!!!!」
ポキッパキッ ジャリッ
「うあああああ! ハッ!?
やめろわおおおおおおお!」
ジャリッ
たった2秒でナタスの右手は複雑粉砕骨折した。下手くそなラップにイライラしていたお陰で痛みが和らいで意識を保ったがこのままではすぐに内出血で手が破裂してしまう!
せめてバレないように治さないと、血が出たら終わりだ。
〝止血《ザクロ》〟
骨は治らないが血管を効率よく塞いで結果として治癒が早まる方法だが微弱すぎて実感がない。
「くそが!このカマやろう!」
ナタスは距離をとるため走り出した。
「カマだろうが何だろうが駆け抜けろ青春!」
きっと只の筋肉馬鹿だ、あの握力さえ気をつければいける。遠距離から目立たない魔法を使って一撃で仕留めよう。
圧縮した空気を放つことで衝撃波を起こす"空気圧縮"とは逆に、空間を削り取ってそこに空気圧の刃を通すのはどうだろうか?
振り返るとカマラッパーは追ってすら来ない。今だ!
「〝
魔法を言い放つより圧倒的に早くカマラッパーはナタスの背後に回る。
「なっ!?」
魔法が外れたのに加え、風の音に紛れて移動していた為ナタスは全く気づかなかったのだ。
「藪からスティックミドルキック!」
ポキッと音を立ててナタスの杖は木片と化す。真空鎌の余韻で強風が流れる。
びゅーーーーーーーー
空間系魔法は目に見える変化が起こりにくい為側から見たら分からないことが多い。
ヒュルルルルルー
「いい風吹いてるぜ!相棒に差し出す救いの手!」
カマラッパーはもう一度手を差し出したがナタスは魔法の疲労と手の怪我で意識を失っていた。
「その大鎌、壊してくれて有難うございます。」
にーにが急に丁寧な口調になった。
「誰が大バカよ!おカマで何が悪いの!さっきまで幼稚だったくせに!」
少女は折れた杖を手に取り観察する。
「あれは演技です。この形状と魔法の精度からしてかつての魔王イワノフが使っていたとされる魔武器のレプリカに間違いありません。」
「はあん?どうみてもスピリタスサイスじゃない。ギルドでも見かけるわよこの杖」
「それはこのスピリトゥスサイスを安全に使えるように改良を加えたものです。イワノフが使っていたものはもっと凶悪で危険なものです。ここの魔石の配列を見て下さい。赤の横に黒い石がありますよね。普通の魔武器は赤い石の横には緑か黄色系の石を並べるんですけど、黒を入れてしまうと全てが"絶対魔法"になってしまうんです。無理な魔法でも命令を成し遂げるまで際限無く所有者の生命力を奪います。」
「はーん、アチキは魔法なんてサッパリ!
セクシャル☆マーシャルアーツの前には全て無意味!
それにしてもあんたは詳しいわね。」
「考古学者ですから!この杖のベースはマンドラゴラの根っこです。マンドラゴラを基礎とする魔武器は生きたマンドラゴラに魔石を順序よく食わせて作ります。死んだ根っこでできた杖はは年季が入ると慣れた人でなければ扱えなくなっていくため、その青年が扱えたことから一年以内に作られたものと判断できます。」
「はあああん?それヤバくない?マジヤバマジカルステッキー
更にへし折ったアチキヤバくない?」
「マジうざいカマラップですね。うざいので私は杖の調査に出ます。その間の試験監督はMCカマーにお任せします。その青年もあえて身柄を抑えず泳がせます。杖の手掛かりになればすぐ報告してください。」
「えー!アチキもっと戦いたい!つか誰が次の番張るのよ」
「適当なのを寄越すわ。」
にーには杖だけ取り上げその場を後にした。
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