第4話 -再開- (ケザキ)

「ワシに味覚は無いぞ」


そうジェークは俺様に伝えてきた

味覚が無いなら別に酒を飲む必要が無いのでは?

ふと、そんな事を考えたがジェークはこう続けた。


「そもそもじゃが、脳は騙されやすいからのぉ。例えばじゃ、ここに香りと色のつけた砂糖水があるんじゃが、どっちがどっちの味だと思うかのぉ?」


そう言ってジェークは、片方は赤色、もう片方は黄色の砂糖水を差し出してきた。

香りと色は明らかに違う。ナタスは差し出された色の違う砂糖水を飲んだ。


「これは、砂糖水に何かいれているだろ?例えば、この赤色のやつ、ベリストロの搾り汁とか入れてるだろ?こっちの黄色のやつとか明らかにノメロの搾り汁入れてあるし。」


なにやらジェークは首をかしげている。そうか、ベリストロとノメロは伝わらないのか。


「ベリストロってのは赤くて手のひらサイズの、甘酸っぱい食べ物なんだが、それにそっくりなんだ。そして、ノメロってのはこぶしサイズの、黄色くてすごく酸っぱいんだが、さっぱりした後味の食べ物なんだよ。」


ジェークはなにやら納得したようだった。


「あぁ、ようやく理解できたわい。こっちの世界では、ストロベリーとレモンと呼ばれているものじゃな。残念ながら香りを近づけているだけで、搾り汁は入っておらんぞ。それほど、脳は騙されやすいってことじゃ!」


なるほど、色と香りで騙されていたというのか。だが、原理はわかったがジェークはどうやって味を感じているんだ?


「ワシは嗅覚と記憶で味を感じておるのじゃ。まぁワシの味覚の事はどうでもいいじゃろ、おぬしも魔法について調べたいのじゃろ?ワシはこの後、魔法が使えるやつと話す用事があるのでの、おぬしも一緒に来るといい、紹介してやる。意思伝達が、こんなに早く使えるようになるなんて驚いたわい、流石は転生者じゃの、おぬしならきっと、すぐにこっち側の魔法が使えるようになるだろう。」


「酒を奢ってもらった上に、すまないな。助かる」


「なぁに、じじいの会話相手になってくれたお礼じゃよ。さて、向かうとするかのぉ」


俺様はジェークと共に酒場を後にした、魔法が使えるやつに会いに行く中で、俺様はジェークにこれまでの事を簡単に説明した。


転生の剣で切られて転生した事、転生前の記憶はあるという事、転生後に捕まった事や過去の手下に裏切られた事。


「なるほどじゃな、おぬしも大変だったのぉ、実のところ、今から会いに行くやつも転生者じゃぞ。ワシと初めて意思伝達が出来た者じゃ。もしかするとお前さんの手下かも知れんな!ささっ、急ぐとするかのぉ」







「ここじゃ、ここがやつの住んでる家じゃ。でも今は出かけてるようじゃな。ちょっと、早く着きすぎたみたいじゃ。」


見た目は今にも倒壊しそうな建物だ、壁は黒く...これはなにやらイバラに覆われている。


「こんなとこに住むやつなんて居るのか?」


俺様はこんなところに住むやつなんて、誰も居ないと思っていた。

しかし、俺はある記憶を思い出した、俺様の城に、こんな感じの部屋を作ったやつがいた事を。


その名は


「ウサロフ.....」


ジェークは目を丸くした。


「おぬし!やつを知っているのか!やつは頭が冴えるやつでの、すぐにこっちの魔法を習得していったんじゃ。しかも全て自己流と言うのだから、すごいものじゃ。まぁ、Aランクの番人には負けてしまったらしいがのぉ。」


そんな話をしていたら、後ろの方から聞き覚えのある声がした。


「ジェークさんごきげんよう、お待たせしてしまいましたね。おや?隣に誰かいるようですが、どちら様でしょうか?なにやら、ものすごい威圧感を感じるのですが。」


俺様とジェークは同時に振り向いた、間違いないこいつはウサロフだ。

ウサロフは驚いた顔をした


「まさか.....ナタス様じゃないですか!どうしてここに!立ち話はアレですから、どうぞ私の家にお入りください!中でゆっくりお話をしましょう!」


「そうだ俺様はナタスだ、色々わけ合ってここに居るんだ、まぁ家の中でゆっくり話させてもらうとする。」


そう、会話をして家の中に入っていった。





家の中は外観と違い、とても物がキレイに整頓されている。


「驚いた、外観が汚いから中も相当だと思ったのだが、こんなにキレイだとはな。」


ウサロフは紅茶を淹れ、笑いながら言った。


「外観はブラフですよ。これだけ汚いと誰も近づかないでしょう?誰にも邪魔されず、色々やりたい事ができるんですよ。そう言えばなぜナタス様はここに?」


数分前にジェークにした説明をした後、ジェークはこう続けた。


「こいつはこっちの魔法を使いたいらしい。おぬしなら、どうにかできると思ってな、さっきこいつは、ケルベロスを転移魔法で殺したんじゃよ。ただうまく扱えて内いないようでの、転移魔法を使った後、気絶してしまったんじゃよ。」


「ナタス様が転移魔法を使ったんですか?私も何度か試したのですが、転移魔法は全然上手くできないんですよ、ナタス様の【空気圧縮スライスタヴィンダル死刑実行エグゼキューション】はなんとかこちらで再現できてたんですが。【物体転移アスポート】は全然再現できませんでした。多分私にはエネルギーが足りないのでしょう。【物体転移アスポート】は教えることができませんが、ほかの2つは教えることができますよ。ただし、私の魔法の威力はとても低いです。ナタス様なら威力は強いでしょう。今のナタス様にはこの2つで十分ですよ。ただ、今日は一度気絶されてるとのことなので、どうでしょう、また後日にと言うのは。」


「なるほど、魔法と言うのはエネルギーを使うのか。

まてよ、そもそもエネルギーってなんなんだ?なんで魔法を使うのにエネルギーを使うのだ?この世界はホントにわからない事が多いな。」


難しそうな顔をしてウサロフはこう答えた


「エネルギーってのは、説明が難しいのですが、以前私も色々魔法を試していたら3日ほど寝込んでしまったんですよ。どうやらエネルギーってのは、睡眠や食事で補給できるようなのです。エネルギー補給の飲み物を最近開発したのですが、飲んでみますか?」


不気味な笑みを浮かべ、ウサロフは怪しい水を差しだした。


「味は悪くないな。だがなんだ....これ..........すごく.........ねむく......................」


ウサロフはおどけた様子で


「あぁ、忘れてました!これ飲むと眠くなるんですよ。睡眠はこの飲み物の効果を高める事が出来ますから、眠り草も一緒に調合してあるんです」


ウサロフはそう言い、眠りにつく、俺様の背中に毛布を被せてくれた。

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