第2話 なぜバレないのか
散々彼女に弄ばれた私はようやく解放され、リビングの方へと降りていった。
私は実家暮らしであるため、当然他には家族がいるのである。
「あら、おはよう伊月。いいわねー可愛い子に起こして貰って」
ニヤニヤした顔で私を見るパーマのかかったセミロングの女性。また、胸も大きくプロポーション抜群のこの人は私の母である。
42歳だがそれよりも圧倒的に若く見えるのである。
「からかうなよ母さん。あ、おはよう深月」
「ふん。朝からラブラブで楽しそうね」
先にテーブルについて朝ごはんを食べているポニーテールの母親に比べ胸が寂しい少女は私の妹であり高校2年生のピチピチのJKなのだ。
ただ、私に対していつも不機嫌な感じ接してくるので、対応は難しい。
「お兄ちゃんおはよー」
そんな深月の横で食べている一回り小さな少女がいた。ツインテールで結ばれた髪が幼さを際立たせ同時に可愛さも醸し出していた。
この娘はもう1人の妹の
「おはよう舞月。お前は深月と違って挨拶ができて偉いなー」
舞月の頭をワシャワシャと撫でた。私にとっては天使のような存在である。
このまま大きくなって欲しいと切にに願うのだった。
「もうーお兄ちゃんやめてよー」
嫌がりつつも嬉しそうな顔をしている舞月である。深月と違い、私に懐いている舞月が愛おしくて仕方がないのだ。
ドン!
不機嫌そうな顔をしてテーブルを叩いた深月はこちらの方を睨んでいた。
「気持ち悪いのよ。ロリコン」
「なんだと?妹を可愛がっても別にいいだろう?」
「見ててキモイのよ。ほんと」
こいつはほんとに私のことが嫌いらしい。反抗期なのか?これは反抗期なのか?昔はもう少しお淑やかで、「お兄ちゃん大好き!」みたいな感じの子であったのに、ここまで変わってしまうとは時とは残酷なものである。
「はいはい、喧嘩はそこまでにしてはやく朝ごはん食べちゃって! あ、麻衣ちゃんいつもありがとう」
階段から降りてきた麻衣に息子を起こしてもらったお礼を母さんが言った。
「いえいえお母様とんでもありません!好きでやってますから!」
ビジネススマイルをうちの母親に見せていた。とても先程、あのようなことをしていた彼女には見えなかった。
彼女はドSである本性を私にしか見せてこない。だからこそ、彼女がドSであると知っているのは私だけである。
本当の彼女を知っているののが私だけというのは嬉しいような嬉しくないようななんとも言えない気分である。
「深月ちゃんに舞月ちゃんおはよう」
「ふん…」
「おはよう麻衣お姉ちゃん!」
対称的な返事をする我が妹たち。舞月は麻衣に懐いているからいいものの、深月は麻衣に対して敵意を剥き出しにしている。
どうしてなのかはよく分からない。ただいつも不機嫌な深月麻衣の顔を見る時はさらに不機嫌になるのだ。
私としては仲良くして欲しいのだが…。
「もう深月ったら…ごめんなさいねこんな感じで…?」
「いいんですよ。私は気にしていませんから!」
巧みな作り笑顔で反応をしていた。その時、ちらりとこちらの方を見た時、ニヤッと母親に向けていたものとは別の彼女の本性とも言えるような怖い笑顔で見てきた。
彼女は目でこのように訴えている。「妹の躾もできないあなたを後で調教しないとね?」と…。
「顔洗ってきます…」
見るんじゃなかった。後悔だけが押し寄せてきていた。
「麻衣お姉ちゃん!舞月ね!ピーマンたべれるんだよー?」
「舞月ちゃん偉い!好き嫌いしなかったらお母様みたい美人になれるわよー?」
「うん!」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるじゃない?」
リビングを出ていく時にそんのような会話が耳に入ってきた。表の顔が完璧すぎて賞賛を送りたくなってしまう。
これが私の前でもしてくれたらどれだけ嬉しいか。
恐らくうちの家族は深月を除いて彼女を嫌がる人間はいない。
家族すらもその手中に収めようとしているのだ。
洗面所にいき顔を洗っていると後ろから声をかけられた。
「ねぇ兄貴…」
「うん…?なんだよ?」
「あの…その……い、行ってくる…」
「お、おう…いってらっ…いねぇし」
何かと思えばいってきますを言いたかったのだろうか。しかし、直ぐに言ってしまったのでほとんど挨拶を返せてはいなかった。
全く変な妹である。
タオルで顔を拭いていると背後に気配を感じた振り返ろうとすると、それよりも先に後ろから抱きしめられた。
「深月ちゃんと何話してたの?」
「別にいってらっしゃいって言っただけだよ」
「ふーん…そうなんだ」
こうやって抱きしめられている間に物凄く柔らかい二つのものが背中に当たっていた。
「な、なにやってんの?」
「抱きついているだけだよ?何か問題でもある?」
そう言うと麻衣は私のうなじを右手の人差し指ですーっと優しくなぞっていった。
その瞬間ゾクッと背筋が凍るような感覚が身体に伝わった。
まだ朝というのに、彼女はお構い無しである。
「ふふっ。感じてるんだぁ?変態さんだね?」
そう言うと、シャツの下から直で私の身体をいやらしく触り始めた。
「ちょっ!!まずいって!ここで!」
「えー?身体は反応してるけどなぁ…?」
これはやばい。彼女のドSスイッチが入り始めている。朝に引き続きまたしても彼女から弄ばれてしまう。
彼女は私の身体を撫で廻しそして時に舐めるような感じに触れてくる。
嫌がってもむしろ彼女は余計に喜んでしまう。
「くっ!ちょっとほんとにやめっ!あっ…」
そんな感じでドSな彼女から朝からのエロいスキンシップ抜け出せなくなった私に神からの助けのようなものが現れた。
「お兄ちゃん!舞月学校行ってくるね!」
我が愛しの天使舞月からの助けである。彼女本人にはそんなつもりはなくとも私にとっては命の恩人とも言える。
しかし麻衣は素早く私の身体から手を離して何もなかったかのように振舞っていた。
「舞月ちゃんいってらっしゃい!気をつけてね!」
「うん!麻衣お姉ちゃんもいってきまーす!」
「気をつけるんだぞ舞月?」
「はーい」
ランドセルを背負って学校へと向かった我が妹であった。
しかし舞月のお陰でなんとか逃れることはできた。
顔を拭いたあとはリビングの方へと向かったのだった。
「あーあ、寸止めなんて…私Mじゃないから嫌いだわ…」
「朝からは本当にやめくれよ…」
不満げな顔をしている彼女にため息をつきたくなってきた。
すると寸止めを食らった彼女は歩いていた私を引き止めて背伸びして耳打ちしてきた。
「この続きは大学の後でね?」
最後に私の耳をぺろっとひと舐めしてリビングの方へと向かっていった。
「もう…やだ…」
私はMでは無い。こんな言葉かけられても興奮するというより憂鬱になった。
もしMになってしまえば全て彼女の思うつぼである。それだけは何としても避けなければ…。
そう心の中で私は誓った。
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