第7話 週三以下=廃部?
「え、ええ、大丈夫です、全然問題無いです……と言うより、他に無いんです入れる部活が」
「文芸部希望って人は初めて聞いたなぁ。文芸部ってほらどっちかって言うとさ、部活が嫌な人が入部する避難部活って感じだったのよね。それを生徒会が差し押さえたってこと、ねえ仁?」
「ああ、そうだったかもなぁ。てかさ、鈴ちゃんの小説せっかく完成したんだし、連載すれば?まあ俺こっそり読んじまったけどね。なかなか面白かったよ」
「ええっ?!読んだんですか?!」
鈴は驚きすぎて思わず席から立ってしまった。斜め前のこちら側に向かって座る市来がおかしそうに笑った。人に自分の小説を読んでもらったことは無い(というより文芸部で読んでもらうはずだったのだ)。
「えーだって鈴ちゃん入部試験の時に小説をさ、嵯峨っちに提出してそのまま帰っていったじゃーん。読んでくれって言ってるようなもんしょ、あれ」
「すまない、神江。……俺も、読んだ」
「ええええ嵯峨先輩もっ?!というか謝らないでくださいよ!」
嵯峨は何故かホワイトボードに新連載"神江ノベル"と書いた。鈴は立ち上がったまま、顔が熱くなる。顔が赤くなっているかもしれない。
「鈴ちゃんの小説結構面白かったと思うよ。読みやすかったしね。連載することになったら、鈴ちゃんも嬉しいと思うし、皆ファンファーレを読む楽しみができると思うんだ。どうかな、記事も文字数がちょっとそれで毎回埋まることが確定だしさ……」
いつもヘラヘラとしている市来に真面目な顔をされると、鈴もうなずくほか無かった。実際、自分の小説が沢山の人に、もしかしたら先生にまで読まれたらと思うと恥ずかしく思ったが、文芸部に入ってたら部誌を作っていただろうから同じことだ。まあ、部誌とは違って形は違うけれど。
何故か七十五号のファンファーレから私の小説が連載されることとなった。その時、不意に隼が挙手をした。
「さっきの神江がしていた話からふと思ったことがあるんですけど。文芸部は廃部してしまいましたが、もしも神江のような部員が文芸部に一人でも居たら……それって悲しいことだと僕は思います。それに、活動日数が週三以下で廃部に追いやるという生徒会の考えも少し考え直す必要がある気がします。部活強制の学校だからこそ、自分がやりたい入りたい部活に入って楽しむべきです。もしも生徒会の政策が少しでも変われば……」
「そうなれば、自分で部活を立ち上げることもしやすくなるかもね。そしたらまずもって避難部活的なものは存在しないかも!」
奏が明るく声を上げた。すると香も発言した。ああ、これが編集会議なのか?鈴はしばらく他の部員達の意見を黙って聞くことにした。
「実際に生徒に調査を取ってみたらどうですか?入りたい部活に入れているか、もし入れていないのだとしたらそれはどんな部活なのか。生徒会の部活に対しての対策についてどう思うか。実際の生徒の現状を調査してファンファーレに載せるんです」
「生徒への調査なら、俺らの担当だな。調査は俺と香ちゃんでやるよ」
うんうん、と嵯峨がうなずきながらホワイトボードにメモをしていく。"部活強制の現状は"という文字の下にトップという文字がぐるぐると丸で囲ってある。トップ記事にするということだろう。嵯峨は真ん中に線を引き、その右側に今度はセカンドと書いた。
「セカンドはどうする。セカンドのうち、大体千文字くらいは神江ノベルが入る」
「嵯峨さん、トップが結構今回重要な内容じゃん?生徒にとっては。だから、トップに力を入れるべきだよ。セカンドはさ……もう多田ティーの格言集とかで良いんじゃん?」
「アホか!確かにトップに力を入れなくてはいけないが……。あ、あれはセカンドにどうだ。前田が入部試験で持ってきたスクープ」
嵯峨が机の上の紙をパラパラとめくりながら香のスクープを探している。そんな時、いきなり部室のドアが開き一同は一瞬ビクッとした。
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