LOVExHATE~愛ト憎シミ~

@kakeru358

プロローグ

「私、これから死ぬから…」

成美なるみはそう言って電話を切った。慌てながら、しかし、慣れた手つきで慎太郎しんたろうは電話を掛けなおす。

『またかよ。』

そう思いつつ、成美の彼氏である慎太郎は電話を耳にあてがった。


 ここは慎太郎の部屋。薄いグレーの天井を見ながら時折、机に置いてある仕事用の黒い鞄に目をやりつつ電話の呼び出し音から成美が出るのを待った。

 慎太郎は26歳の社会人、大手企業の営業マンで、マンションで一人暮らしをしていた。対して成美は大学2年生の年下で年は6つ離れている。


「おーい、成美!また父親に何かやられたのか?」

普段は落ち着いたトーンで話す慎太郎だったが、やや大きめな声で成美に声をかけた。

「もう何もかも嫌になった。あいつに髪引っ張られて何度も蹴られた!」

そう言った後に、掛ける言葉を探していた慎太郎が脳内で感情を整理して声を掛けようとした矢先。


「さよなら…」


小さな声の後にやや大きな「ドンッ!!」と固形物がぶつかる様な衝撃音が聞こえて電話が切れた。

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