外伝3 クリスマス直前に
「ねぇ葉音、クリスマスツリー、飾らないの?」
「飾らないわよ。邪魔なだけ……だ、し」
葉音はキラキラした光一の瞳を見て顔をしかめる。
「……飾りたいの?」
「うん!」
葉音の言葉を、光一は元気いっぱいに肯定した。
「だってもうすぐクリスマスだよ! ツリーとか靴下とか飾らないと。
サンタさんが来ても何にもなかったら、寂しいよ!」
「うちにサンタなんて来ないわよ」
「え? なんで?」
「私がいい子じゃないから、だって。あのクソオヤジ!」
「クソオヤジとか言うから、いい子じゃないって言われちゃうんだよ……」
光一があきれてため息をついた、その時。
「葉~音~!!」
バーン!
大きな音を立ててドアが開き、はずれ、むつみが飛び込んできた。
「やっほ~♪ むつみちゃんが遊びに来たわよ!」
「……ろくちゃん、ドア壊しちゃったら、寒いよ……」
「そんなことはど~でもいいの!」
むつみはそう言って無邪気に笑う。
葉音は何も言わず、人差し指をドアに向けくいっと動かした。
ドアがふわりと浮き上がり、カチリと元の場所にはまる。
「ねぇねぇ葉音、私い~こと思いついちゃったのよっ!!」
「何?」
むつみはふっと不適に笑い、胸を張った。
そして、宣言する。
「サンタクロースを捕まえる!!」
その大きな声が、部屋の中にもわ~んと響く。
「そんな絵本の悪者みたいなこと……ねぇ、葉音?」
光一は呆れた声でそう言って、同意を求めて葉音を見た。
しかし。
「いいわね、それ」
「えぇ!?」
「でしょ? いいでしょ! プレゼントぜ~んぶ独り占めするの!」
「前から気にくわなかったのよね。あのクソオヤジ」
「ね、どうやって捕まえる?」
「任せて頂戴。私にできない事なんてないから」
光一をおいて、話はどんどん進んでいく……
「トナカイも貰っちゃおうね!」
「赤鼻のは私が貰うからね」
「OK~☆」
光一はしばらくおろおろと話を聞いていた。
が、意を決して叫ぶ。
「ダメだよっ!!」
シーン……と、部屋が静まりかえる。
「葉音もろくちゃんも、そんなこと考えてたらホントにサンタさん来てくれないよ!
今からでもいい子にして待ってればまだ間に合うかもしれないし、
二人ともいい子にしてなよ!!」
ものすごい剣幕だった。葉音もむつみも、驚いて何も言えなくなってしまったほどだ。
「ほら葉音、クリスマスの飾り付けするよ!
飾りどこにしまってあるの?
あ、そう言えば物置に入ってたのぼく見たことあるっ!」
光一はそうまくし立てると、物置へと走っていった。
「……なんだったの……?」
「さぁ……」
後に残された二人は顔を見合わせる。
「あんなに怒った光一、初めて見た」
葉音はそう、ポツリとつぶやいた。
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