外伝2 花火


「きれい……」


“言った”と言うより“つぶやいた”という感じの葉音の言葉。


それを聞いて、光一はうれしくなった。


『やっぱり一緒に来てよかった~♪』


この日、光一は葉音と花火大会に来ていた。


葉音は最初来るのをしぶっていたが、今はとても楽しんでいる。


「どう?葉音。やっぱり来てよかったでしょ?」


「悔しいけど、光一が正しかった。実際に見るとこんなに違うのね」


葉音が花火大会に来るのを嫌がった理由は“家にいても見れるから”だった。


葉音の家には、世界のどこでも見ることができる不思議な水晶玉がある。


それを使って見ることができるから、それでいいと主張したのだ。


「花火が消えた後って、煙が残るのね」


「うん」


「私、あの煙、なんとなく好き」


「なんで?」


「なんとなくって、言ったでしょ。一回でわからなかったの?」


「むぅ~」


光一は少し拗ねたようにそう言って、空を見上げた。


また一つ、大きな花が夜空に咲き誇り、消える。


「光一」


「何?」


「今日は誘ってくれて、本当にありがとね!」





― その日、一番光一の印象に残ったのは花火ではなく、めったに見られない、葉音のかわいらしい笑顔だった ―

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