外伝3

「冷た~い。凍えちゃうょ~」


ティンクは空の上で震えていた。今日の天気は、雨。


水滴が体にあたり、ティンクの体温を奪って行く。


「雲の上まで行けば雨はこないけど、よけいに寒いからな~」


ティンクは遥か下を見る。


「海の中に入っちゃえば寒くないかも。でも人にみつかったらやばいもんな~。どこかで雨宿りするか……」


ティンクは溜め息をついた。


「ヴェルに会いに行きたいけどな……」


その時、大きな黄色い龍、雷の龍が悠々とティンクのそばによってきた。


「?」


次の瞬間。


ドーン!!


という派手な音ともに、雷の龍がその身に光をまとい、勢いよく下界に下って行った。


こうしておきるのが雷である。


「ヒャっ!キャ~ぁぁ……」


ティンクは気絶し、下へ下へと落ちていった。




『ん…体に力が入らない…』


それからどれくらいたったか、ここがどこなのかわからない。


目が上手く開かなくて前がよく見えなかった。


「全く。落ちてくるなんて危ないですわね」


『その声、ヴェル?』


よく見えないが、ヴェルの綺麗な黒髪と、なつかしい顔が見えた気がした。


「目が覚めたら、まっすぐ空に帰るんですよ、ティンク」


『ん…よく見えない…』


ティンクは再び意識を失った。




ティンクが目を覚ますと、海辺の洞窟の中にいた。いつの間にか雨はやんでいる。


「ヴェル?」


辺りを見回してみても、ヴェルの姿はない。


「夢……だったのかなぁ?」


ティンクは空に上がっていった。




「全く。ティンクったら」


ヴェルは空に上がっていくティンクの様子を、岩陰から眺めていた。


「私の姿を見たら、ティンクは海に残るって言い出すかもしれませんからね」


そしてポチャンっと音をたて、ヴェルは海に潜っていった。

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