第8話
ティンクは空にあがってくるとき、ヴェルには内緒で平べったい石を拾ってから来た。
そして、それから何ヶ月もの時が過ぎた冬。
「どうかヴェルに届きますように」
ティンクは石に傷をつけ、遙かしたの海へと落とした。
その日、ヴェルは趣味にいそしんでいた。
「あぁ、あそこ! 真っ白い巻き貝に太陽の光が一筋の光となって当たっています! 角度は……」
そのとき、ボチャッという音を立てて、石が落ちてきた。波が揺れ、太陽の光がぶれる。
「まぁ! なんて無粋な石! 誰が投げたんでしょう!?」
ヴェルはその石を拾ってみた。すると、何か文字のような傷がついているのが見えた。
「?」
よく見てみると、その石の傷は言葉になっていた。
『ヴェルへ ティンク』
ヴェルはしばらく、じっとその石を見つめていた。何度も何度も、短い文を読み返す。
「まったく……ティンクったら。石なんか投げたら危ないじゃないですか」
そうつぶやくヴェルは、幸せそうに微笑んでいた。
―FIN―
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