三人から見た村
三人から見た村 ―母―
娘一人と息子一人。そして私の三人で、とある村にやってきた。
特に用事があった訳ではない。
七歳の娘が行ってみたいと言ったので来てみただけだ。
この村には、今はもう誰も住んでいない。
古びた建物。伸び放題の草木…
とてもとても、寂しい場所だった。
「お母さん…」
五歳の息子が、私の服を引っ張った。
「どうしたの?」
「ここ、変だ。早く帰ろう…怖い…ほら見て。あれ…」
息子が指さした方を見た。特におかしなものはない。
「なあに?」
「見えないの?変な化け物がいるよ…」
もう一度息子が指さした方を見てみると、一本の枯れ木がたっていた。
確かに言われてみれば、化け物のようにも見える。
「あれはただの枯れ木よ。」
「そうじゃなくって!もっとよく見てよ!」
息子の手がかすかに震えているが、その理由がよくわからない。
「何であれがそんなに怖いの?」
娘もそう言って首をかしげた。そして、楽しそうに話す。
「私はここ好き♪なんかお話に出てきそうなんだもん。」
言われてみると確かにそんな感じもする。
娘がここに来たいと言った訳はおそらくこれだったのだろう。
「僕は、嫌いだ。早く帰りたい。」
私は息子に笑いかけた。
「そうね。お母さんもあんまり好きじゃないかな。
ここ、ちょっと寂しすぎるものね。
そろそろ帰りましょ。」
「え~?もっと見た~い!」
娘が文句を言った。
「わがまま言わないの。ほら、帰るわよ。」
「は~い。」
娘はつまらなそうに返事をすると、私におとなしくついてきた。
息子は私の手をぐいぐい引っ張って、一刻も早く村から出ようとしている。
何がそんなに怖いのだろうか?
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