仲間(森の神様、どこまでも続く一本の道外伝)
「 ~♪ ~♪ 」
「?」
ある日友人が口ずさんだ歌は、歌詞が聞いたこともない外国語だった。
「それ、どこの国の歌?」
尋ねると、彼女は笑顔で答えた。
「私の住んでた村の歌。歌詞は、私たちの村の中だけで使われている言葉なんだよ。」
でもその笑顔は心なしか、少し寂しそうだった。
「へ~。そういえばお前夏休みもずっと寮にいるけど、その村って遠いのか?」
「……」
彼女は一瞬言葉に詰まった。
「ん…遠いわけではないんだけど、ね。そういえばあんたもいつも寮に残ってるじゃん。なんで?」
「……」
俺も一瞬言葉に詰まった。
「俺も別に…遠いってわけじゃないんだけど…な。」
なんとなく気まずい空気になってしまう。
「あ…ははははは…」
「はははは…」
笑ってみるも、余計に虚しくなっただけ。
「帰るところがないって、寂しいよね。」
「だな…」
そして再び沈黙。二人とも、しばらく故郷に思いをはせていた。
「…なんで、帰らないの?」
彼女がおずおずと尋ねてきた。
「街に入るとき、二度と村には帰ってこないって約束させられた。追放されたってわけだ。」
「…!」
彼女は驚いていた。ふつうは信じられないだろうな。と俺は思う。
「俺が住んでたの、すっごい古風な村だったからな。信じられなくても無理はないけど、ホントなんだよ。」
「信じるよ。だって私もだもん。」
「何が?」
尋ねると、彼女はさらっと爆弾発言を口にした。
「私も、追放されたの。村の秘密を知っちゃって。」
そしてニッと笑った。
「仲間だね。私たち。」
俺はしばらく呆然としていたが、笑い返した。
「だな。」
そして俺は言った。
「さっきの歌さ、俺もわかる言葉に訳してくんね?覚えるから。」
「いいよ。じゃぁ、今度訳してくる。」
俺たちは、笑いあった。
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