どこまでも続く一本の道2

 それから何年かたった ある日、今度はある青年が道の向こうに行こうと思い立ちました。


 自分を子供扱いする村のあり方に、我慢ができなくなったのです。


 彼は先の見えない道を、どんどん歩いていきます。


「どこまで行く気なの?」


 ふいに、誰かに話しかけられました。驚いて振り返ると、自分よりずっと年下の男の子が立っていました。


「街まで。」


 彼は答えました。そしてその男の子に尋ねます。


「どれくらい歩いたらつくか知ってるか?」


 男の子は答えました。    


「どんなに歩いたって、街なんかありゃしないよ。この道には、終わりがないんだ。」


「なんでそんなことがわかるんだよ?」


「僕はこの道の精霊だもの。」


 変な子だな、と思いながら青年は更に尋ねました。


「じゃあ、道を歩いていた皆はどこに行ったんだ?」


 すると男の子は、ニィっと笑いました。見たものをぞっとさせる、笑みでした。


「僕が食べちゃった。」

 

 青年は驚いて立ち止まりました。しかし、またすぐに歩き出します。


「君のことも、食べちゃうよ?」


 男の子にそう言われましたが、負けずにこう言い返しました。


「食えるものなら、食ってみろ。」


 そして青年は歩いて歩いて歩いて…ついに街にたどりつきました。


「ほら、終わりがないなんて嘘じゃないか。」


 青年は、ずっとついてきていた男の子に勝ち誇ったようにそういいました。


 すると、男の子は青年の目をまっすぐに見て、こう言いました。


「もう二度と、村に帰ってこないで。」


「…は?」


 青年は驚いて聞き返しました。すると男の子は強い意志を持った瞳でこう言いました。


「街の便利な暮らしを知ったら、村の人はみんな村を出て行ってしまう。そうした ら、すぐに村は誰もいなくなってしまうよ。

 故郷がなくなるのは、君だっていやだろ?だから二度と、村には帰ってこない  で。」


 青年はしばらく下を向いて黙っていましたが、やがてポツリと


「わかった。」


 というと、街に入っていきました。


 男の子は街にとけ込んでいく青年の背中をしばらく見ていましたが、やがてもと来た道を戻っていきました。

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