どこまでも続く一本の道

どこまでも続く一本の道1

 ここは、山の中の小さな村。外の世界から隔離されているかのような、寂しい村…


 その村からは、一本の道が伸びていました。ほかの街に続いている一本の道が…


 子供たちは尋ねます。道の向こうに、行ってはダメか、と。


 大人たちは答えます。どこにも行かずに、ここにいろ、と。


 しかし子供たちは言うことを聴かず、道を歩いていってしまいました。


 それっきり、それから何十年立とうとも、子供たちは帰ってきませんでした…


 ある時村に残っていた一人の女の子が道の向こうに言ってみようと思い立ちました。


 女の子と言っても、もう自分のことは自分でできます。


 けれどお爺さん、お婆さんばかり住んでいるこの村の中では、子どもです。


 彼女は、まっすぐな道をどんどん歩いていきました。


 けれど歩いても歩いても、その先にあるだろうと予想していた街は、見えてきません。


「どこまで行く気なの?」


 ふいに、誰かに話しかけられました。驚いて振り返ると、男の子が立っていました。


「街まで。」


 女の子は答えました。そして尋ねました。


「どれくらい歩いたらつくか知っている?」


 男の子は答えました。    


「どんなに歩いたって、街なんかありゃしないよ。この道には、終わりがないんだ。」


「なんでそんなことがわかるの?」


「僕はこの道の精霊だもの。」


 変な子だな、と思いながら女の子は更に尋ねました。


「じゃあ、道を歩いていた皆はどこに行ったの?」


 すると男の子は、ニィっと笑いました。見たものをぞっとさせる、笑みでした。


「僕が食べちゃった。」


 女の子は怖くなって、急いで村に帰りました。


 それからというもの、村から出て行こうとする者はいなくなりました。


 こうして村は、いつまでも隔離されたままの状態で栄えたのでした。

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