短編（サイト時代）

三人から見た村 ―息子―

お母さんとお姉ちゃんと僕の三人で、知らない村へやってきた。

ここは…怖い。

誰もいなくて、寂しくて。

それに…変なのがいっぱいいるんだ。

さっき黒くてでっかいお化けが壁をすり抜けて家に入っていったし、

時々草の間をガサガサって、何かが通り抜けて行く音が聞こえるし、

あっちにはぬぅって、化け物が立ってる…

それに…とにかく何か変だ。絶対、ふつうじゃない。

ここは、化け物の巣なんだ…

「お母さん…」

僕はお母さんの服を引っ張った。

「どうしたの？」

「ここ、変だ。早く帰ろう…怖い…ほら見て。あれ…」

僕はあっちにぬぅっと立っている化け物を指さした。

「なあに？」

「見えないの？変な化け物がいるよ…」

お母さんはしばらく僕の指さした先を見てから答えた。

「あれはただの枯れ木よ。」

「そうじゃなくって！もっとよく見てよ！」

嘘だ。あんなの、どう見たって木じゃない。あんな木は見たことない。

あれは、化け物。お母さんには、どうしてわからないの？

「何であれがそんなに怖いの？」

お姉ちゃんにもわかってないみたいだ。どうして…？

「私はここ好き♪なんかお話に出てきそうなんだもん。」

お姉ちゃんはなんだか楽しそうだ。

「僕は、嫌いだ。早く帰りたい。」

僕がそう言うと、お母さんが僕に笑いかけた。

「そうね。お母さんもあんまり好きじゃないかな。

ここ、ちょっと寂しすぎるものね。

そろそろ帰りましょ。」

「え～？もっと見た～い！」

お姉ちゃんは文句を言った。

でもお母さんが

「わがまま言わないの。ほら、帰るわよ。」

というと、諦めておとなしくなった。

早く…早く帰りたい。

僕はお母さんの手をぐいぐい引っ張って、早くここからでようとがんばった。