若葉警報
キュイ~ン! キュイ~ン!
テレビから鳴り響いた音に、少年はビクッと身を震わせた。
「お母さ~ん! 若葉警報が出たよ!」
叫んでから気がつく。今は留守番中、家にいるのは自分だけなのだ。
「大変だ!」
ニュースで見た、被災した家の映像が脳裏にちらつく。家中の窓を閉めるため、少年は駆けだした。早くしないと外から草木が入り込んできて、大変なことになってしまう。
自分の部屋の窓、客室の窓、両親の寝室の窓、リビングの窓。一つ一つチェックして、開いていたら閉める。最後に台所の窓を閉めようとすると、ツルが一本、勢いよく伸びてきた。
慌てて閉めようとしたが間に合わず、侵入を許してしまう。ツルが邪魔で窓が閉まらなくなってしまった。
「はさみはさみ!!」
大急ぎで自分の部屋へと走り、お道具箱をあける。幼稚園生の時から使い続けている黄色いはさみを手に取り、台所に駆け戻る。
侵入しているツルは三本に増えていた。窓から腕をのばし、えいえいと三本とも切る。そうしている間に枝が一本伸びてきたので、バキリと折ってやった。そしてようやく窓を閉める。
「ふーっ……」
ほっと息をつき、その場に座り込む。窓の外では、ミシミシと音を立てながら木々が生長し、景色が若葉で埋め尽くされていた。目を閉じたが、その様はすっかりまぶたの裏に張り付いてしまっていた。気持ちが悪い。間違いなく今夜は怖い夢を見るだろう。
しばらくぼんやりしていると、やがて外の音は、枯れた木や葉のたてる乾いた音に変わった。パキパキと枝の折れる音もする。
(そうだ、火を付けないと……)
お母さんが帰ってこられない。玄関の前もきっと雑草がふさいでしまっているだろう。
少年はマッチを探しに立ち上がった。危機を脱したとはいえ、まだ胸がどきどきいっている。
袋を持たされるからって、留守番なんかするんじゃなかった。今度はちゃんと、買い物について行こう。
サークルお題:若葉・まぶた・はさみ・警報・ヤンデレにしない
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