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 企画は通らないし友達と喧嘩はするし事故って死んだらしい犬の死体は見るし好きな人に彼女はできるし上司は変態だし……! 日々真面目に生きてるのになんでこんな目にあわなきゃならないの!


 家に入ったとたんに荷物を放り出し、台所に向かう。何でもいいからやけ食いしたい。


 が、冷蔵庫の中はがらんとしていた。何も入ってない。そう言えばしばらく買い物行ってないや。冷凍庫まであさってやっと、丸めた冷凍ご飯を見つけた。もういい今日の夕飯はこれ。解凍ご飯……じゃあんまりだから、これはおむすびなんだ、ってことにしておく。具、何も入ってないけど。


 ご飯をチンして一口食べてみる。ぬるいからもう一回レンジへ。チーン、取り出す食べてみる。今度はちょうど良い。


 おむすびを持って、ダイニングへ。洗濯機につながるホースに足を引っかけないように、気をつけて歩く。抜けてしまったら大惨事だ。びしょびしょになる。洗濯機はテーブルの上でガタガタと昨日の服を洗っている。洗濯機の揺れが伝わって、テーブルもガタガタ揺れている。


――ススギヲ カイシ シマス


 がたんっと勢いよく椅子に座り、おむすびにかじりつく。味気ない。


 企画は通らないし友達と喧嘩はするし事故って死んだらしい犬の死体は見るし好きな人に彼女はできるし上司は変態だし帰ってきても一人だしこの部屋ときたら狭いし暗いしゴキブリ出るしおむすびは味気ないし。考えれば考えるほど泣けてくる。鼻の奥がツンとして、目から涙がボロボロこぼれる。あえてぬぐわない。全部流れちゃえ。


 ばくばくと夢中で食べていたおむすびに、いつの間にか味がついていた。塩味だ。涙の味。


――ススギ ガ カンリョウ シマシタ  カンソウ ヲ カイシ シマス


 洗濯機が乾燥に入り、音がガタガタからゴウンゴウンに変わった。おむすびは塩味を濃くしていく。


 帰ってきても一人だしこの部屋ときたら狭いし暗いしゴキブリ出るし、私は薄味が好きなのにこのおむすびときたらどんどんしょっぱくなっていく。大体私塩おむすびよりもわかめとか鮭の方が好きだし。さらに言うならおむすびよりサンドイッチの方が好き。卵のやつとシーチキンのやつ。


 ぱくり。一口サイズになったおむすびを口に放り込む。いい加減、涙も引っ込んだ。テーブルの上の洗濯機が動きを止める。


――カンソウ ガ カンリョウ シマシタ

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