小人
ある時。僕のたった一人の友人Aの頭がパカッと開いて、中から小人が飛び出してきた。
Aの頭の中から出てきたにしては、大きい。そいつの身長は、僕の膝くらいまであった。
「やあやあ友よこんにちは」
「こんにちは……だけど一体君は誰だい?」
尋ねると、小人は笑った。
「私こそ君の友の正体。Aの頭の中で、ずっとAを操っていた者だよ」
「そうか。じゃあ今までAがやっていた事は全て、君がやらせていたことなのか」
小人は僕の理解が早い事を喜んだ。
「そうともさ」
するとその時。小人の頭がパカッと開いて、中からさらに小さな小人が飛び出してきた。
「君は見事に騙されてくれたね! 嬉しいよ」
大きさは、さっきの小人の半分くらい。
「君は誰だい?」
僕が尋ねると、さらに小さな小人は大袈裟に両手を使って肩をすくめた。
「おいおい察しが悪いな~。私こそ君の友の正体の正体。
Aの頭の中でずっとAを操っていた者を、ずっと操っていた者だよ」
「え~と……?」
今度は少しややこしい。僕はしばらく考えてから尋ねた。
「君はさっきの小人を操ることで、ずっとAを操っていたのかい?」
すると、さらに小さな小人は胸をはった。
「君は実に頭がいい! その通りだよ。実際僕がここにいる今、そいつらは全く動きゃしないだろ?」
「なるほどそうだな」
確かに、頭が開いたままになっている二人は微動だにしない。
「というわけで僕こそが君の友だ。よろしく」
「よろしく」
さらに小さな小人が右手を出したので、僕はしゃがんでその手を握った。
するとその時。さらに小さな小人の頭がパカッと開いて、中からさらにさらに小さな小人が飛び出してきた。
「やあやあ君は賢いわりには騙されやすいね」
大きさは、さっきのやつの半分の半分。
「ふむ」
僕はそいつを手の平に乗せて立ち上がった。
「もしかして君は……」
するとさらにさらに小さい小人は、ニヤリと笑った。
「どうやらわかったみたいだな。私こそ君の友の正体の正体の正体。
頭の中でずっとAを操っていた者を、ずっと操っていた者を、ずっと操っていた者だよ」
二度あることは三度あるという。さすがに、もう騙されない。
「でも君の頭の中にも、君の正体が隠れているんだろう?」
さらにさらに小さな小人は、驚いて目を丸くした。
「君は実に賢いな」
そしてさらにさらに小さな小人の頭がパカッと開いて、中からさらにさらにさらに小さな小人が飛び出してきた。
「やあやあこんにちは」
大きさは……めちゃくちゃちっちゃい。
「こんにちは」
僕はそいつに笑いかける。
そしてふっ、と勢いよく息を吹き掛けて、手の平から飛ばしてやった。
「あ~れ~」
飛んで行くそいつの悲鳴はその体にふさわしく、細く小さなものだった。
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