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あの人の作品は中途に終わった。放置された謎、伏線。自分たちに訪れる結末を知らない登場人物たち。
アオイは書かれなかった結末に思いをはせるようになった。「何が起こったのか」を考えた。それは次第に、具体性を帯び、アオイ自身もびっくりするようなかたちでつながりはじめた。
これが正解なのかもしれない。
メモを取り、図を書いて、あちこちに線を伸ばすうちに、それは確信へと変わっていった。
続きを書こう。あの人が書けなかった続きを。あの話の続きで「何が起こったのか」を推理するのだ。
アオイはあの人が根城としていた第二社会科準備室に出入りするようになった。幽霊には会えなくても、あの人と同じものを見て、同じものを感じれば、あの人の構想により近いものが書けるかもしれないと思ったのだ。
アオイは書いた。やはり短編は得意ではない。ついつい寄り道をしたくなる。一日の作業は、いつも前日に書いた部分に線を引いて消すところからはじまった。時にはその前の日に書いた文も。
ノートはあっという間に文字でいっぱいになったが、進んでいるのか後退しているのか自分でも分からなかった。
苦悩があって、困難があった。
書きはじめてから数ヶ月が経った。雨の音を聞きながら執筆したこともあれば、片手で団扇を仰ぎながら執筆したこともあった。間に長い休みがあり、気がつけば、制服の袖が短くなったり長くなったりしていた。テスト期間中は部室に来れず悶々とした。それらすべての時間の中心に、この部屋とノートがあった。
完成が見えはじめたとき、カレンダーは残り一枚になり、部屋はすっかり寒くなっていた。
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