第6話 誕生パーティーにて

14歳の誕生日の数日前

私の体重は43㎏となり、無事にダイエットに成功しました。

嬉しくなり、アビーに


「やったわ!アビー。ダイエットに成功したわ!どう?一年前と比べてスッキリしたでしょう?」


そういうとアビーは手をパチパチ叩きながら


「えぇ、お嬢様一年前と比べて色々とスッキリいたしました。色々と。」


私はその言葉にうなずきながら


「そうよね、そうよね。顔も輪郭が分かるし、二の腕や、足もスッキリしたし、お腹も平らになったわ!」


「胸も平らになりましたが」


アビーがそんな胸をえぐるような事を言うので私は胸の前で腕を交差させ


「やめて、アビー。そこは触れてはいけないわ!そんなことを言われると無い胸がえぐれて凹んでしまうからそれ以上は触れてはダメよ!」


そういうとアビーは頭を一度下げた後、メジャーを持ちながら近づいてきて

「失礼しました。では、お誕生日パーティーに着るドレスの採寸を始めさせていただきます。まずは胸が・・」


「声に出さずに静かに紙に書いていって!」







そんなやり取りがあったが無事に誕生日を迎えることができた。

今日こそカルロスを見返す日!気合を入れなくては!!


今日のドレスは一年かけて私が考えたデザインで作られている。

色は薄い紫でノースリーブ。首まで布があるもので、デコルテの部分はレース素材となっており、肌が透けて見える。腰の部分で切り替わり腰から下は膨らんでいるタイプとなっている。腕にはドレスの色と同じ色をした二の腕まである長い手袋をつけている。

髪型は三つ編みにして右の肩から垂らしてある。


化粧もこの一年研究した成果を発揮させるべくばっちり決まっている。


鏡を見て今日の出来に満足しながら、会場を覗いてみると開始1時間前なのにすでにたくさんの人が集まっている。

私はその中にいるであろうカルロスを探すが見つからない。まだ会場に来ていないのだろうと待つこと30分。

この時間になるとほとんどの招待客が来ている時間だ。

そっと会場を見てみるとカルロスの姿が・・・・ない。


なぜ、カルロスが来ていないのだろう。今日は記念すべきカルロスを見返す日なのに。本人が来ていないのでは見返せないではないか。

招待客をすべて把握しているお母様の所に聞きに行くと


「あら、バード家の人間は今日呼んでないわよ。一年前あなたを公の場でフッたんですもの。呼ぶわけがないじゃない。ソフィと仲のいいアレク王子はお呼びしたけれど、忙しいから来られないそうよ。レヴィ家のお二人はもういらっしゃってるわ。」


お母様はそう当然のように言ったのだった。


・・・・お母様がカルロスをパーティーに呼ばないということを失念していた。

よく考えれば、家に恥をかかせたカルロスを今年も呼ぶと思っていたことがおかしかったのだ。


そうなると私がカルロスを見返すことができるのは10ヶ月後の王子の成人記念パーティーとなる。

今日のために努力してきたのに・・・まさか延期になるなんて・・・・。

少し落ち込んでしまったが、仕方がないので今日はパーティーを上手く乗り切ることだけを考えようと思い、パーティーの始めにする挨拶におかしなところが無いか見直していく。



そうこうしているうちにパーティーの始まる時間となってしまった。

階段から登場した私に視線が集まる。

私を見た貴族の間でひそひそと何かささやかれているが気にせず挨拶を始める。


私は本日の主役としてみんなの前で挨拶をした後は適当に隅の方にでも行って・・・・なんてことが通るはずもなく、挨拶が終わった途端私の周りに人が集まる。


グラス片手にお腹を揺らしながら挨拶に来る男爵の方

「ソフィ嬢。お久しぶりですな。一年と前と比べるとずいぶんとお痩せになられて・・・・」


小さいお花を手に差し出しながら一生懸命挨拶してくれる女の子

「ソフィさま、わたくし、ぷれぜんとにお花をおもちしました!」


名刺を差し出しながら挨拶をする商人の方

「本日はお招きいただきありがとうございます。私は隣国で商いを行っているメイリーと申します。我が国にお越しの際には是非ご利用ください。」


頭に手を当てながら相談に来る貴族の方

「ソフィ嬢、どうしたら僕の薄毛は治るのでしょうか?」


挨拶が終わるとすごい勢いで顔を近づけてくる貴族のご令嬢

「ソフィ様、本日はお招きいただきありがとうございます!ところでお話は変わりますが、サムナー様に好いた方がおられるとか。ご存じありません?」


という様々な挨拶を笑顔で返し・・・誰よ途中で薄毛の悩みなんか相談したのは。

私は薄毛になったことはないわよ!

しかも最後のご令嬢なんてサムナールートの悪役令嬢の一人じゃない。


一通り挨拶を終え、グラスを片手に会場の隅に居ると

「こんにちは。ソフィ嬢。美しいあなたが壁の花となっているなんてもったいないですよ。よろしければ僕と一緒にダンスでもいかがですか?」


半年前よりも口説くのが上手になったサムナーがダンスに誘ってきた。

その後ろにはセリーナがいて、こちらに小さく手を振っている。


私はセリーナに手を振り返すと、サムナーの手を取り笑顔で

「喜んで、お受けするわ」

「光栄です。」


サムナーはウィンクをしながらそう返事をした後、私の手を引き、会場の中央へ行き私とダンスを踊り始めた。


サムナーとダンスを踊っているせいか周囲からの視線が背中に突き刺さる。


サムナーだけに聞こえる声で

「貴方ってすごい注目されるのね。すごいわね。」


と私が言うとサムナーは目をパチパチとさせた後、

「僕より、ソフィ嬢の方が注目を集めてる気がするんですがね・・・・」


「?確かに、一年前と比べると体の太さ半分くらいになっているもの。皆驚くわよね。」


私が頷きながら納得しているとサムナーは何とも言えない顔になり


「いや、そういうわけでは・・・」


と言った後に何やら考え事をしていたようだが最後に

「まぁ、考えても仕方がないことってありまよね。」


サムナーは笑顔でそういって私とのダンスを終えた。


さっきの話は何だったのだろうと首を傾げたがサムナーに聞こうにももう他のご令嬢に囲まれてしまっており、聞きに行けない。

さすが攻略対象者と言ったところだろう。


サムナーに感心しつつも私は上手く人をまき、飲み物を取りに会場の隅に向かうとそこには会場の隅にある椅子に座ったまま酔いつぶれて眠ってしまっている男性がいた


近づいて声をかけてみるが全く反応しない。

頬をつついても髪の毛を引っ張ても全く反応がない。


私は起こすのをあきらめて使用人にブランケットをもってきてもらうことにした。

使用人が戻ってくるまで暇だったので酔いつぶれている人を観察してみる。


髪は深い緑色をしており、顔には丸い眼鏡をかけている。

睫毛は長く、鼻筋は通っていて整った顔をしている。

まるで『ドキプリ』に出てくるイアン・オルコットの様な顔をしている。



・・・・・まてよ、もしかしなくても本人では?

だが、ゲームの中ではまだイアンは海外に留学中のはずで、ここに居るわけがないはずだ。

そう思うのに目の前にいる人はどう見てもイアンで・・・


少し混乱する私の元にちょうどブランケットを持ったアビーがやってきたのでブランケットを受け取り、イアンを起こさないようにそっとかけると急いでその場を去った。

これ以上ゲームの攻略対象者と知り合いになりたくないのだ。






私がその場を去った後、ブランケットをかけられたことで少し意識が浮上したイアンは

自身にかかっているブランケットをボーっとした目で見つめ、それに鼻を近づけて臭いをかぐと

「いい匂い。この匂い好きだな」

と呟いた後、パーティー終了までそのまま寝続けた。








誕生日パーティーが無事に終わり招待客の見送りをしているとサムナーが近くにきて私の手を取り


「先生。今度相談に乗っていただいてもいいですか?どう口説いても落ちない女性がいまして。」


真剣な顔をしてサムナーがそういうので私は自分の胸を叩き


「任せなさい!その時までに私も勉強をしておくわ!」



サムナーは私を見て少し微笑んだ後、

「よろしくお願いします。」


と言って手を振りながら馬車に乗り込んで帰っていった。



それにしても今のサムナーに落とせない女性はいなかったはずなのだけれど・・・・

一体落とせない女性って誰なのかしら?凄く気になるわ



その後、招待客全員を見送った私は部屋に戻り、サムナーが来た時に相談に乗れるように口説き方が書いてある本『全生き物を口説き落とせる最強口説き術~メスはオスのどこに惹かれるのか~※どんな動物とも渡り合える屈強な体が必要となります』を読みながら眠ってしまい、翌日風邪をひきました。




★現在のデータ★

名前 ソフィ・マクリーン(14)

身長 154㎝

体重 43㎏

現在の評価:よくここまで痩せましたね。この調子で努力を惜しまずきれいになって行ってください。体調管理もしっかりとするように。


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転生しましたが悪役令嬢な上にデブスでした。 @kurikanoko

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