第23話 狙われた三刃

その頃、用を足した三刃はコンビニの外に出て、周囲を見回した。


「どこから出たんだっけ……」


 来た道を思い出しながら歩き始めた。歩いている中、三刃は何かの気配を察した。三刃は人気のない所を探し、そこへ向かった。しばらく歩き、人がいないことを確認し、三刃は風丸を装備した。


「出てこい。僕に何の用だ?」


 三刃の声の後、黒装束の男が現れた。


「俺の気配を察するとはな……」


「質問に答えろ、何の用だ」


「お前を捕らえに来た」


 男はそう言うと、服の中から鎖鎌を取り出し、三刃に向けて投げた。三刃は飛んできた鎖鎌を剣を振って地面に叩き落とした。その後、三刃は男に向けて走り出し、刃が届く範囲まで近づき、攻撃を仕掛けた。


「甘いな!」


 この直後、三刃の背後で鎖の音がした。地面に落ちた鎖鎌は魔力で浮き上がり、三刃に向かって飛んで来ていたのだ。その事に三刃は気づき、横に飛んで攻撃を回避した。


「俺の攻撃を見破るとはな。それなりに戦いの経験は積んでいるようだな」


「何を偉そうに!」


 三刃は魔力を刃に込め、思いっきり縦に振って衝撃波を放った。男は小刀で衝撃波を切り払い、消滅させた。


「そんなので俺が倒れると思うか?」


「じゃあこれは?」


 この後、三刃はもう一度剣を振った。同じように衝撃波が来るだろう。男はそう思ったのだが、飛んできたのはヨーヨーのように縦に回る衝撃波だった。男は小刀で衝撃波を受け止めたが、今度の衝撃波は簡単に崩れなかった。


「こっ……これは!」


 金属を切るような音が周囲に響いた。衝撃波が電動ノコギリのように縦に回るせいで、男の小刀が徐々に削れていった。


「クソッ!」


 男は両手に魔力を込めて爆発を起こし、衝撃波をかき消した。衝撃波は爆発で消えたのだが、そのせいで持っていた小刀は木端微塵になってしまった。


「俺の刀が……」


 その時、三刃が男に接近し、剣を振り下ろした。


「しま……た……」


 血を流しながら、男はその場に倒れた。三刃は武器をしまい、倒れた男にこう言った。


「大丈夫だ。死なない程度に斬ったから」


 戦闘後、三刃は誰かいないか周囲を見回した。


「誰もいないのかな……」


「三刃君!」


「大丈夫お兄ちゃん!」


 遠くから姫乃と翡翠の声が聞こえた。三刃は倒した男を担ぎ、急いで二人の元へ向かった。


「おー、待たせて悪いな」


「トイレ行ってたんじゃないの?魔力の気配があったから急いで来たんだけど」


「こいつに襲われた。僕を捕らえるとか言ってたけど」


「お兄ちゃんを捕まえて何するつもりだったんだろう……」


 その直後、上空から無数の網が三刃達に向かって降ってきた。そして、網は強く引き締まり、三刃達の動きを封じてしまった。


「ううっ……も……もしかして、あそこで倒れている奴の仲間の仕業か?」


「その通り」


 三刃の問いに答えるかのように、上にいた黒装束の男性がこう言った。しばらくし、同じような黒装束を着た人物が大勢集まり、三刃達を囲んだ。


「な……何をするつもりだ?」


「貴様らを服部の交渉道具にする」


「は?どういうことだよ!?」


「知らない方がいい、連れてくぞ!」


 リーダーらしき人物が部下に命令し、この場から去ろうとした。だが、一人の少年が行く手を阻んだ。


「あなたは……何故こんな所に?屋敷にいるはずでは」


 リーダーは少年に近付いて話したが、少年は何も言わず、リーダーの腹を殴った。


「うげぇっ!!」


「リーダー!」


「坊ちゃん!何をするんですか!?」


「黙ってろ」


 少年はそう言うと、残った部下達に攻撃を始めた。少年は縛られた三刃達を開放した後、こう言った。


「早く茉奈の所に行け」


「え?服部の知り合いか?」


「早く行け!」


 少年は叫んだあと、その場から消えた。




 数分後、三刃達は服部の屋敷に戻った。


「お姉ちゃん!翡翠ちゃん!」


「無事でよかったよ~」


 姫乃と翡翠の姿を見て、泣きながら凛音と凛子が姫乃と翡翠に抱き着いた。無視された三刃は少しムッとした顔で呟いた。


「おい、僕の事は無視かよ」


「お前も無事でよかった」


 三刃の呟きを聞き、服部が言葉を返した。その後、服部はすぐに三刃達を三郎がいる部屋に案内した。


「おお。お客人、無事でよかった」


「遅いから何かあったかと思ってヒヤヒヤしたぜ」


 三郎と乾がこう言った。その横に座っていた白也が立ち上がり、三刃にこう言った。


「話の前に謝りたい。君達を忍の争いに巻き込ませてしまって」


「まさか、あの黒装束の奴らと関係があるんですか?」


 三刃の言葉を聞き、三郎達は動揺した。


「まさか、もう黒部は動いていたのか」


「昨日茉奈が捕まえた奴が別の手段で連絡をしていたのか?」


「そうとしか思えません。また話を聞かないといけませんね……」


「あの、一体何があったんですか?」


「すみません、説明お願いします」


 三刃と姫乃がこう言うと、三郎達は元の位置へ戻って座り、白也が説明を始めた。


「では説明を始めます。二十年前、この里は黒井原戸という男が仕切っていました。この男は私利私欲の為に里の人間を苦しめていました」


「ここでわしが動き出したんじゃ」


 三郎が声を上げた。白也は説明を三郎に任せると合図をし、その場に座った。合図を見て頷いた三郎は、話を再開した。


「わしは原戸に決闘を申し込んだ。わしが勝てば里の実権を貰うが、負けた場合は潔く腹を切ると約束した。決闘の結果、わしが勝利した。そして、里の実権を手に入れ、今に至る。じゃが、原戸はわしから里の実権を奪い取ろうとしている。こういう風にな」


 と、三郎は廊下の扉を開け、縛られた貢一を見せた。


「この人は?」


「原戸の部下じゃ。あいつに屋敷を探れと言われたんじゃろ。だが、何をやっても口を割らん。その上、何かしらの方法で原戸に連絡をし、君達の事を知らせた。きっと、原戸は君らを人質に取り、実権を渡せと脅そうとしたんじゃろう。しかし、こいつは何を聞いてもわからんとしか返事せん」


 話を聞いた凛音は、縛られている貢一に近付いた。


「なんだよ嬢ちゃん?何か用?」


「教えてください。あなたは一体どうやって原戸とかいう人に連絡をしたんですか?今さっきの三刃さんの話だと、もうすでに私達の事があなた方に知られています。ということは、私達の姿を見たあなたが何らかの方法で原戸とかいうおっさんに連絡したのは確実です」


「ハッ!そんな事敵に教える?馬鹿じゃねーの?」


「教えないんですか。じゃあ始末しましょう」


 凛音はそう言うと、自分の武器であるチェーンソーを取り出した。


「アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!待った待った!」


「待ちませんよ~」


「言うから!全て話すから!」


 返事を聞き、凛音はにやりと笑った。


「話すから殺さないでよ……連絡方法はスマホ。こいつを使ったんだよ。あんたらに捕まって縛られる前にポケットに隠していたスマホで連絡したんだ。連絡の内容は客人の人数と性別と容姿の特徴。たったそれだけ」


「本当にそれだけなんですか?他に原戸とかいう爺さんが何か企んでるとかは知りませんか?」


「そこまでは話してくれなかった。聞いても、今は話す段階じゃないって返事でさー、ほんと、何考えてるのかわかんないよ」


「本当に?」


「本当に本当!知ってたら話すよ!」


「そうですか~」


 凛音は話を終え、三郎にこう言った。


「お話し終了です」


「そ……そうか。君は尋問の才能があるな」


「お褒めの言葉ありがとうございます」


 話が終わった後、三刃は白也に話しかけた。


「あの、実は僕達が原戸の部下に捕まりかけた時、助けてくれた子がいるんですよ」


「誰かに助けてもらったのか?」


「はい。確か坊ちゃんって言われてました」


「それと、服部さんの事を知っていました」


 三刃と姫乃の話を聞き、白也は考え始めた。


「もしかして、海人か」


「海人っていうんですか?あの子」


「私の幼馴染だ。と言っても、歳は離れているが」


「海人か、里に戻ってから会ってないな」


「私も海人と話がしたいのだが……この状況では」


「幼馴染なのに会えないんですか?」


 三刃の問いに対し、白也は頷いた。


「海人の苗字は黒井。黒井原戸の孫なんだ」


「え……」


「ああ、でも海人はいい奴だ。まだ幼いが、しっかりとした奴だ。それに、原戸の事を大嫌いって言ってたな」


 服部がこう言った直後、折り紙で折られた手裏剣が飛んできた。


「折り紙の手裏剣……海人か」


 服部は折り紙の手裏剣を拾い、折られた紙を開いた。


「海人からの手紙か」


「なんて書いてあるんだ?」


「白也兄、茉奈へ、爺の野望について話がある。さっき俺が助けた兄ちゃん達と一緒に外に出てくれ、門の近くで待ってる」


 手紙を読んだ後、服部は三刃達の方を見た。


「ということだ。行くよな?」


「ああ」


 その後、三刃達は外に出て行った。服部はすぐに近くにいた海人を見つけ、近付いた。


「海人!久しぶりだな」


「茉奈、再開の挨拶はこれでいいとして、爺の話をしよう」


「待て、ここで話すのはまずい。中で話した方がいい」


 白也がこう言った後、再び屋敷の中に入り、三郎達がいる部屋に向かった。部屋の中に入り、三郎は海人に近付いた。


「大変だったな、ここまで来るのに大変だったじゃろ」


「大丈夫だったよ、あいつらに見つからないように移動したから」


 海人は言葉を返した後、三郎達にこう言った。


「聞いてくれ、俺の爺は血狐を復活させて、自分の物にしようとしている」


「血狐を復活させるだと!?そんな事、できるはずがない!」


 三郎が大声で叫んだ。三郎の迫力に負け、三刃達は引いたのだが、海人は一歩も引かず、続けてこう言った。


「あの爺は出来るって言ってた。変な奴らから買った機械を使って、血狐の封印を解こうとしているんだ」


「だが、あの封印は何千年も封じられておる!」


「三郎さん、時代は流れたんだ。封印を解く方法もいつかきっと発見される」


「じゃあ……どうしようもできないってわけ!」


 凛子がこう言った。凛子の質問に対し、海人は答えることができなかった。


「どうしようもできないわけじゃないけど……どうすればいいのか……分からないんだ」


「簡単だよ海人」


 この時、白也が声を上げた。


「封印を解かれる前に、封印を解くという機械を壊せばいい。何も難しいことじゃない」


「白也兄……」


 海人は微笑む白也を見て、うなだれた。


「そうだったよな……早く機械を壊しておけば……」


「何で気が付かなかったの?」


 翡翠がこう言ったのだが、服部がそれに対して返事をした。


「あいつは物事を難しく考えてしまうことがあるのだ。だから、簡単な答えが出せない」


「そうなんだ」


 話が終わり、三郎は手元の水を一気飲みした後、懐から笛を出し、吹いた。その直後、壁や天井裏から、無数の忍者が現れた。


「皆の衆!これより黒井原戸の血狐復活の野望を阻止するため、黒井家に攻め込む!夜までに準備をし、わしの合図を待て!」


「ハッ!」


 忍者達は話を聞いた後、姿を消した。その後、三郎は三刃達にこう言った。


「これから先はわしら忍者の仕事になる。お主らは今日中にも帰れ。茉奈の友人達に傷を付けたくないからのう」


 そう言って、三郎は部屋から出て行った。


「皆、一旦部屋に戻りましょ」


 姫乃がこう言った。三刃達は返事をした後、部屋に戻って行った。

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