第4話 三刃の決意
桜並木の通りで、桜が大量に待っている。その中に混じって、桜の木も宙に舞っていた。モンスターが巨大な爪で気をへし折ったからだ。そのモンスターを相手に、姫乃は戦っていた。
「なかなかやるわね……」
日本刀をしまい、姫乃は攻撃を避ける事に専念していた。相手は巨大だが、いずれ攻撃の後に反撃のチャンスができる。そのチャンスで相手を仕留めようと姫乃は考えていた。しばらくし、上空から手裏剣と苦無が飛んで来て、モンスターの頭に命中した。
「あれは……」
「援護する。昼間のお詫びだ」
服部が上空から現れ、モンスターに攻撃をしていった。そのおかげで、チャンスができるようになった。数分後、手裏剣が目に当たったモンスターが、手で顔を覆い、悲鳴を上げた。
チャンスだ。
姫乃はモンスターに近づき、鞘を収めた日本刀を掴み、居合いでモンスターを斬った。倒したと思った。
だが、姫乃は今気付いてしまった。モンスターの皮膚はかなり硬く、日本刀で斬っても、攻撃は通用しないという事を。
「そ……そんな……嘘でしょ……」
折れた日本刀を地面に落とし、姫乃は震えながら後ろに下がってしまった。
「オイ!前を見ろ!!」
服部の声も聞こえた。その時姫乃は我に戻ったが、彼女の目にはモンスターの大きな爪が映っていた。
「あ……」
次の瞬間で、自分は死ぬ。姫乃は死を悟った。だが、耳に大きな風の音が響いた。それと同時に、モンスターの大きな爪にひびが入り、割れて砕けた。
「何今の……」
「ギリギリ助かったな……間に合ってよかった」
遠くから三刃の声が聞こえた。モンスターは三刃の方を見て、大きな唸り声を上げた。襲ってくると予想した三刃は、宝石に魔力を込め始めた。
「使い方はこれでいいんだよな!」
次の瞬間、三刃が持つ宝石が緑色に輝き始めた。三刃の手の中で宝石が動き出し、徐々に剣の形になっていった。
「これが……父さんの剣か……」
三刃は自分が持つ剣を目にして、小さく呟いた。その隙にモンスターが大きな声を上げながら、三刃に向かって突進してきた。
「三刃君危ない!」
姫乃の声が聞こえ、三刃はモンスターの方を見て剣を構えた。接近してくるタイミングを計り、三刃は腰を落として相手を斬る構えを取った。数秒後、モンスターは三刃の攻撃範囲に入った。今が斬るチャンスと三刃は悟り、モンスターの攻撃をかわして魔力を込め、モンスターの腕に向かって剣を縦に振った。スパンとモンスターの腕が斬れる音が響き、少しして巨大な腕が地面に落ち、地面を震動させた。
片腕を無くしたモンスターは悲鳴を上げながら、出血する腕を押さえた。止めを刺そうとする三刃だったが、急に体が動かなくなった。
「う……お腹が……」
体が動かなくなったのは、急に空腹を感じたから。姫乃と服部は三刃に近づき、こう話しかけた。
「三刃君、魔力の源がカロリーだって知らなかったっけ?」
「初耳だ。とにかく、何か食べれば魔力が回復するのか?」
「うん。だけど……今なにも持ってないの」
「兵糧丸なら持っている」
と、服部は兵糧丸を取り出し、三刃の口に入れた。三刃は小さく深呼吸すると、再び剣を構えてモンスターに向かって行った。
「覚悟しろ、デカブツ!」
三刃はモンスターの頭の上に飛び、そのまま勢いをつけてモンスターの頭を剣で斬った。モンスターは悲鳴をあげ、その場に倒れた。
「や……やったのか?」
「ええ」
姫乃が三刃に近づき、癒しの魔法で彼の傷を治し始めた。
「ありがとう」
「お礼は私が言いたいわ。助けに来てくれてありがとね」
「あ……ああ」
その後、姫乃は黙々と治療を続けていたが、しばらくして三刃にこう言った。
「三刃君、もしかして私達と一緒に戦ってくれるの?」
三刃はこう聞かれ、少し言葉を考えながら姫乃に返事をした。
「ああ。覚悟を決めたよ。バカだった父さんのように、僕も戦う」
「もう決めたのね」
「ああ。今後ともよろしくね」
「うん」
二人の様子を見ながら、服部は小さくこう呟いた。
「何だこの桃色な雰囲気は?」
三刃が魔法使いとしてモンスター達との戦いを覚悟した翌日。学校帰りに三刃は湯出宝石店へ向かっていた。店に入るとすぐに、湯出と輝海が顔を出した。
「三刃君……」
「どうやら、決めたようだな」
「はい。僕もモンスターと戦います。父さんのように」
三刃の言葉を聞き、輝海は三刃を魔法結社に連れて行った。結社に着き、三刃は結社に入る事を知らせた。
結社に入る手続きを終え、三刃は椅子に寄りかかり、息を吐いた。輝海は三刃の前に座り、持って来たコーヒーを一口飲んでこう言った。
「さて……手続きは以上だ。聞きたい事があれば今聞こう。俺って結構忙しいからそんなに話しできないから、今がチャンスだぞ」
「あの、魔法使いはほとんどこの結社にいるんですか?」
「いや。ほとんどじゃない。一部の魔法使いは個人で活動していたり、犯罪者になったりしている」
「個人で活躍してる人もいるんですか」
「ああ。個人で活動していたり、俺達とは別で集団で動いている奴らもいる。忍者はその系統だな。まぁ一部は俺達と繋がっているけれど。知り合いに忍者がいたから君にあいつの形見を渡せられたんだ」
こう言った直後、輝海のポケットから音が響いた。
「おっと悪い。残ってる仕事の話だ。後は湯出に聞いてくれ」
「はい」
「じゃあ俺は戻る。怪我はすると思うが、早死にするなよ。じゃあな、頑張れよ」
と言って、輝海は去っていった。
結社に入る手続きを全て終え、三刃は背伸びをしながら結社の中を歩いていた。すると、大怪我を負った魔法使いが入って来た。
「しっかりしろ!」
「至急治療魔法を使える奴を呼べ!できるだけ上位の奴を!早く!」
周りが慌てる中、怪我をした魔法使いはゆっくりと口を開き、自身の身に何があったのかを語り始めた。
「ぐ……例の犯罪者に遭遇した……倒そうと思ったが返り討ちに……」
「分かった。これ以上喋るなよ、怪我が広がるからな」
「道を開けてくれ!怪我人が通るぞ!」
三刃はこの光景を見て、呆然としていた。その後ろにいた姫乃が三刃の肩を触った。
「うわぁっ!?」
「あら、そんなに驚く事?」
「いきなり後ろから肩を触れたら誰だって驚くよ……それより、あの人は……」
「あの人、魔法使いが関わった疑いがある事件の調査をしてたのよ。あの人は水魔法の使い手じゃあそれなりに強い方で、ずっと犯罪者たちと戦ってきたベテランよ。あの人をあそこまで追い詰めるなんて、相手は手ごわいわね」
「モンスターの他にも犯罪者を相手にするのか」
「あなたが選んだ道よ。悔いはない?」
「……ない」
と言って、三刃は結社から出て行った。
結社から去っていく三刃を見て、輝海は小さく呟いた。
「やっぱ、あいつの息子だな……」
「どうかしたんですか?」
後ろにいた湯出が、こう聞いてきた。
「ああ。三刃君の後姿を見てたら、なんかあいつの事を思い出してさ」
「相場さんの事ですよね。俺もそう思いましたよ」
「……始めて会って話してみたけど、なーんかあいつと性格が真逆だよな」
「そうっすね。それ程あの人の馬鹿な遺伝子が入ってないってことですかね」
笑いながら二人は話をしていた。そんな中、湯出がこう言った。
「そう言えば、確か妹もいましたよね」
「ああ。死ぬ前に相場の奴が長女が出来たって言ってたな。確か三刃君が生まれた一年後だったよな。名前は翡翠ちゃんって言ってた」
「皆にどんだけ性欲が強いっていじられてましたよね」
「そうだったな」
この話の直後、輝海はある事に気付き、湯出にこう言った。
「なぁ、もしかしたら翡翠ちゃんも魔法使いなのか?」
「あ……そうかもしれませんね」
少しの沈黙の後、湯出はこう返事した。
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