『あとがき』

 この世に不思議なことがあるとすれば、それは今こうして私がこの論文のあとがきを書いていることそのものでしょう。


 私はまだ一介の大学生ですけれども、こうして小倉姪カミツカエという、私の妻となる予定の女性との共著を上梓する幸運に恵まれました。


 幸運?


 けれども、これを、運、というくくりには私はしたくありません。不遇の人に思いを馳せると、単純な運・不運ではあまりに辛い線引きですから。


 また、『みずかけっすべし』という天啓のような言葉もいただいたんですけれども、それも私のような凡人にとっては責任の荷重を思ってなかなかに辛い行き方です。


 ですので私は、これが一番近い言葉かな、と今では思っています。


『取り返しのつかないことは、実は、無い』


 その理由は・・・それは私と、小倉姪カミツカエの2人だけの秘密です。



 月出 日昇光

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