2人で面接受けてみる

 出版社からDM来たっ!


 けれどもその社名を見て「?」な僕らだった。


「首肯社?」

「そう。なんかラノベ専門でしかもR18が多いみたいだね」

「R18というと・・・残酷描写?」

「ううん。Hなやつ」


 なせ、ラノベの出版社が論文を?

 わざわざ僕らの街までやってきてくれた編集さんと会ってみてその意図がよく分かった。ファミレスで待ち合わせして、事前に出版社に電話して聞いていたフルネームと生年月日で本人確認をした。ただ、便宜的にZさんとしておこう。いや、Aさんじゃ芸がないからっていう単なる僕の趣味なんだけどね。


 まずはZさんが小倉姪さんに質問してきた。


「小倉姪さんてお寺の娘さんなんですね。いつから仕事の手伝いを?」

「小学校低学年の頃からです」

「儲かりますか?」

「儲かりません!」


 次に僕への質問。


「月出さんは小倉姪さんの彼氏さんですか?」

「えと。友達です」

「あ・・・そうなんですね」

「そうなんです」


 言葉少なく納得し合う僕とZさん。

 僕の方から核心をついてみた。


「どうしてラノベの編集さんが? しかも、エ・・・いや、恋愛がテーマの作品が多い出版社とお見受けしますけど」

「『エロ』とはっきり言っていただいていいですよ。理由をズバリ言います」

「は、はい」

「飽きたんです。ラノベに」


 僕と小倉姪さんは疑問符を頭に浮かべたけれども僕の方が頑張って質問を続けてみた。


「え、でも。ラノベが稼ぎ頭ですよね? というかそれしか無いですよね? 」

「その通りです。でも、私は待ってたんですよ。ラノベよりも分かりやすく読みやすく共感が持ててなおかつ反骨心や現状を打破しようとする気概も込めた作品を」

「はは・・・あの論文が?」


 僕は小倉姪さんに一任した論文の序文を思い浮かべた。


『なるかんにんは誰もする、ならぬかんにんするのこそ誠のかんにんとみなさんよ・・・そう! 皆さん!今すぐいじめをやめましょう! なぜなら明日死んじゃうかもしれないから。キミもキミがいじめてる子も。因果応報なんて言いたかないけど、次生まれたら人間じゃなくてうにょうにょした感じの虫くんだったらなんかヤでしょ? んでね、自分ちのお寺とコミュニケーション取れてる家の子はね、そういう『うにょうにょヤだな』っていう生理的な嫌悪感を小さい頃からわたしのような攻めてる坊主ボーズが徹底的に刷り込んでるからいじめをする確率が低いんだよね。ただ、そのせいでそういう優しい子たちが先回りして‘ならぬかんにん’をした結果、いじめっ子ちゃんたちをのさばらせてるんだとしたらエラいことだから、この論文ではそういう論点を一個ずつぶっ潰しながら持論を展開するよ!』


 実はこの序文を読んで改めて自分が小倉姪さんのことが気にかかる理由がわかった。

 彼女のとことん普通っぽい容姿にこの感性がセットで漏れなくついてくるということなんだろう。それは顔だけじゃなくって、彼女が履いていたデッキ・シューズのセンスにも滲み出ているような気がする。


 それはZさんも同じらしい。Zさんは小倉姪さんの顔を見つめて更に褒め称えた。


「素晴らしい朗らかさです。こんなネガティブな内容をここまであっけらかんと」

「ああ、それはどうもです」

「そして、あなたはとても魅力的です」

「はは、それもどうもです」

「ツイートの画像を見て一目惚れしました。公私ともに私と付き合ってください!」


 え。

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