第4話 使い魔すらも美しい

先手必勝という言葉があるくらいだから僕は先に使い魔を出すことにした。

「出てこいうなぎ!!」

面倒臭い、とでも言い出しそうな雰囲気で緑龍は出てきた。

僕は、ヒョロい見た目から愛称をつけ、うなぎと呼ぶことにした。

「しまった!!レディーファーストという言葉もあるんだった......」

どっちを選べばよかったんだろう、やっぱり後者かな。

「ふふっ 優しいんだね、出てきてクジラちゃん」

声掛けに応じて、美しくきめ細かいスジ、シルクのようなヒレを持つ神々しさすらある白い鯨が、姿を現した。

「かっけぇぇ」

見た目の綺麗さに目がいってしまっていたが、かなりのサイズでスピードでは、こちらが勝っていそうだが体力は圧倒的に負けていると感じた。点数のこともあるけど。

「それじゃあ、行くよ!!」

天美さんが声を出すと、クジラはぐっと力をため、しおをふき、クジラの周りが霧のようなもので包まれた。

「ん?あっさり先手取られたな」

最初は様子見も兼ねて、霧の中に入り自分の攻撃できる射程まで近づいた。うなぎが攻撃できる位置まで来れたが、クジラは動く気配がなかった。

(もしかして、思っている以上に動けないのか?)

ダメージになるか分からないが尾で頭部を攻撃しにいった、が......

ひらりとかわされて、ヒレでのビンタで吹き飛ばされるところだった。

「え、まじ?」

耐えて反撃されると思っていたためこっちも避ける準備ができていたが、スピードでも負けているのは想定外だった。

「渾身のビンタが〜 避けられちゃったか」

まさに渾身のって感じの一撃だった。それよりもスピードまで負けているとなると距離を詰められて殴り合いになれば絶対にこっちが先に倒れる。

「詰んだか」

それでもとにかく反撃の手を考えていると、何故か距離を詰めてこなかった。

「霧の中にいると回復してるとか?向こうも様子見のためかな?分からん」

霧がどんな効果を持つのか考えてみたが全く情報がなかった。

「もう少しどうなってるか探らないと」

もう1度霧の中に入り、今度は最初から攻撃に行かず回避優先で近くに張り付いた、幸い、小回りのきく大きさではないのでヒットアンドアウェイで少しだけ攻撃出来るようになってきた。

「それなら、ふっとんじゃえ!!」

と、クジラは背を向け、しおをこちらにふきつけてきた。

咄嗟にガードしたこともありダメージは少なかったが霧の外に弾かれてしまった。

よく見ると、霧が最初より薄く、狭くなっていることに気づいた。

(それならとりあえず、霧が晴れたときまた張り付いて、霧を再展開しようとする隙に一気に攻撃しよう。)

と、考えていると中からいきなり巨大な尾ヒレがうなぎをなぎはらった。

「うおっ!! ってまず」

かなり重たい一撃を食らってしまった。僕の点数のおかげでうなぎの体力は、ほとんどなくなっていた。

「スピードがなくても不意打ちで重たいの1発当てればこっちが有利になるのよね」

ドジった。ひよってないか心配になりうなぎの方を見ると、目の色を変えて相手を睨んでいた。

「お前やっぱ怖いな…でも、諦めるような馬鹿な真似はしねぇよな!!」

「グルルル」

やる気満々になったようで一気に勝負を決められるほど、みなぎっていた。

「逆境に強いって感じでカッコイイね。でもネ」

クジラは再び背をこちらに向けてきた。

「とりあえず退避だぁー」

なんとか、大きく距離をとったが、すぐにはしおをふきつけてこず、力をため最初のような霧を展開してきた。

「やられたっ!!」

この隙で何とか攻撃しないと、また不意打ちのような攻撃で今度こそ倒されてしまうと思っていたのに、攻撃されると思い込んで簡単に霧を出させてしまった。

(霧の効果が分からないと結局負けるぞ、持続ダメージを受けるとかだったらもうこの中には入れないし......)

そこでふと最初に攻撃を避けられたことを思い出した。

(スピードが早くなったのに倒しに来なかったのはなんでだろう、実は早くなってない?......こっちが遅くなったのか!!)

「なら、運になるけど、試してみるか」

行き良いよく霧の中に入り、そのまま突っ込んだ。

「とどめかな!!」

ヒレでのビンタが来ることに賭けて勢いをとめずに腹部にうなぎを潜り込ませた。

「いっけぇ!!」

ぶっ飛ばされた怒りを込め、貫くかのごとく噛み付いた。

『ホォォン』

「嘘、なんでこんなに!!」

1点読みが当たったみたいだ。このままなんとか押し切ろうと2撃めをと思った時、クジラは大きく暴れ反対にあったヒレにうなぎは飛ばされてしまった。

勝負あった。なんとか勝ちにいこうとしたが一矢報いたような形になって僕は敗北した。

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