FEEDBACKERS

@AmonoOki

第一時空戦線 桃侍鬼哭の蒔絵となりて


《掌紋感知

 照合結果、哺乳類ヒト科、人類の掌紋と認定

 Ki-vi:system起動

 受精卵の超高速発生分化を開始

 並行して、同処置における癌化抑制剤の投与を開始

 胎児形成まで16%……

 32%……

 68%……

 84%……100%

 上皮組織チェック完了・異常なし

 結合組織チェック完了・異常なし

 筋組織チェック完了・異常なし

 神経組織チェック完了・異常なし

 疑似羊水揮発排出

 同時に人工子宮との接続を解除

 呼吸による酸素交換開始

 代謝補助ナノマシン起動

 Orat戦士、桃山 祐善の記憶書き込みを開始

 書き込み完了》


 ゴトリと衝撃を受けたことを認識すると同時に、俺の意識は浮上した。

 目の前は、真っ暗闇に包まれている。

「なんじゃこの桃は?刃が通りゃあせんぞ」

 外からくぐもったように聞こえるのは、老爺の声だ。

 そこに、老婆の声が加わった。

「槌でも持って来ましょうかね」

 バタバタと足音が遠のいていく。

 俺は相棒に声を掛けた。

「Kivi、状況を」

 動作確認がてら手を開閉していると、視界の片隅に文字が躍り出す。


《外的要因より分析……

 50代夫婦に当機を食物と誤認されている模様

 なお、誤認対象はバラ科モモ属の物と思われる》


 ・・・・・・こんなデカい桃が実るほど酸素濃度が濃いのか?この時代は?

「Kivi、俺の肉体の成育状況はどんなもんだ?」


《戦闘適応成育まで、あと27%》


 まだしばらく掛かりそうだ。

 外から同じ老婆の声が続く。

「あんた、これで刃の背を叩いてみ」

 どうやら老婆が槌を持って戻ってきたようだ。

 あまり時間はない。

 質問を変える。

「自力成育は可能なレベルに達しているか?」


《摂食栄養補給に生育補助ナノマシンを用いれば早期達成可能

 予想成育要時間、604,800秒》


 文明発達状況から類推して、備蓄という概念は充分に持っているように思える。

「Kivi、槌が下ろされる前に鬼滅戦闘用強化外骨格当機を展開しろ」


《了解》

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