第23話 番外編 ユウキとカナ

番外編

甲子園出場が決まってすぐの夏休みのある日のこと。


カナは部活が終わり、着替えの前に携帯をみてみると、

「着信20件、ライン20!」

と思わず声がでるほどびっくりした。ストカーばりのこの事態に急いで電話をユウキにした。

「カ・ナぁ。家閉め出された。どうしよう。シュン」

「今からすぐ行きます」


15分後かなり頑張ったと思う。

玄関の前に野球の荷物散乱させてどかっと座ってる。しかし、シュンとした顔でうつむいていたユウキが私の顔をみるとまるでワンコみたいに嬉しそうに手を振ってくれる。


「カナぁありがとう。本当にありがとう!」

「鍵は?どうしたん?」

「それが聞いてくれよ。鍵家の中においたままなのに鍵かかってる?」

「へぇ!どういうこと?

なんか怖くない⁈」

「確かに!

じゃ、俺の大事なバット持って家に入って様子みてくる。カナここにいろ。」

ユウキはバットを構えて二、三度ふりぬく。

「ユウキ危ないよ。私もついていく!」

ユウキは悩んでいた。家のなかで不審者にあってカナが襲われたらとも思うけど、家から出てきた不審者とカナが鉢合わせするのも心配だ。

「じゃ、カナは俺の後ろで携帯もってついてきて。」

ユウキがカナのカギで玄関を開けて、そっと家に入った。家の中はシーンと静まり返っていて、少しひんやりする。


慎重に家に入って、まずはリビング。誰か居る気配はまったくない。

それから、順番に台所や寝室、寝室にあるクローゼット押入れ、トイレお風呂全部見てまわった。

まったく誰もいなかった。


「とりあえず玄関にある荷物持ってなかに入ろう。」


ダイニングテーブルの上にはユウキの鍵がおいてあった。

「ほらね。ここに置いてあった!

俺、野球に行く前にここに置いておいたんだ。

荷物もって先に自転車に置きにいって、もどって鍵閉めようと思ったら鍵かかってたんだ。

その時は遅刻しそうで焦っていたし、まあいいかとそのまま練習にいったんだけど。帰ってきたら空いてないし家に入れなかったというわけ。

不思議だろう。」

「えっ!なんか気持ち悪くない?

ていうか今日部活10時だったよね。

私がいつものように7時に朝ごはん用意しに来たとき起きて一緒に食べたよね。

私帰ったの8時半だったから十分準備の時間もあるし、何故に遅刻⁈。」

「えっカナそこ。そこなん。今は鍵・・・。

遅刻はちょっとおいておいて。」

「いや、どうして遅刻なんですか?ユウキぃ!」

大きな体を小さくして

「すまん。カナ。ご飯食べた後、読書感想文用に本読んでたら、寝落ちしてしまった。

携帯アラーム設定してあったからなんとか起きれたけど。なんと、集合五分前。ダッシュで向かっていたというわけ。」

ユウキはすまなそうに手を合わせた。

ユウキは野球に関しては本当に努力家で毎日家で遅くまで素振りや筋トレをかかさない。

その上、昔から読書が苦手で小学生の時なんか1ぺージ目開いたまま寝落ちしていたくらい。

「わかりました。明日からは帰らないで私宿題して部活に出かけるまでいることにする。」

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