第10話 抽象化の先に
もう何度同じことを言われてきただろうか。
直線といくつかの色を押し込めただけの絵。
組み合わせを変えただけの絵。
何を表現しているのかわからない絵。
印象派の点画技法やキュビスムとは違う、抽象画を天命として筆をとってきた。物事を光の粒で表現する点画技法も、あらゆる角度から見たものを表現するキュビスムも、私が目指しているものとは違う。
見えるものではなく、感じられるもの、全ての根源となる何か、その何かを表現したかった。複雑なものを簡単に、簡単なものをより単純に、全ての根源となる本質だけを追い求めた。たどりついた先は確かに直線によって分けられた小箱と内包される色だけだ。
今や私の命は風前の灯火で、既に筆を取ることも、誰かにこの答えを伝えることもできそうにない。それだけが心残りだ。誰かに伝えたい。知って欲しい。覚えておいて欲しい。
生命、宇宙、そして万物を表現する究極の抽象化の答え。それは。
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