第8話 レイア王


 末娘の真意を汲み取れない酷い父であった。


 長女と次女の心ない甘言に慢心した道化であった。


 裏切られ邪魔者にされ城を追われた愚王であった。


 ブリトンの城に戻り、恥知らずにも再び玉座にいられたのは最愛の末娘のおかげであるというのに。ワシの死後、国を治めた賢女の末娘は姉らの血族によって非情にも殺されてしまうのだ。


 娘が何をしたというのだろうか。


 心無い甘言をよしとせず、ただ自らの誠意を以って忠を示し、不遇の時を経てなお、愚昧なるこの父を許し、やっとの平和を得たはずなのに。


 神よ、もしくはこの愚王の生涯を書き連ねる者よ。


 この愚王の恥を晒すのは構わない。それが事実なのだから。


 だがせめて。せめて我が最愛の娘には、末娘にだけはせめてのもの慈悲を。


 娘の生涯を弄ぶような、この最低の結末にせめてもの慈悲を。







という啓示を得てね。ハッピーエンドとバッドエンドの二種類を用意したんだぜ。興行的に売れそうな方を使ってくれたまえ。

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