第2話 詩人
吟遊詩人がよく通る澄んだ声で歌っている。ある男の告白の歌だ。
あぁ君よ、私の愚痴を聞いてくれるだろうか
あぁ君よ、心弱き私を救いたまえ
あぁ君よ、私の罪を許したまえ
要約すると世界中から注目を集めた男が、実は内心では異なる心持ちでいたことを告白し、許しを請うている歌らしい。吟遊詩人にしてみれば、パラレルワールド、if、別解、わかりやすく言うなら二次創作、ということなのだろう。なにせ歌われているのは私が創造した男の、正しくは前世の私が創造した男のことなのだから。
特に思うことはない。前世の私が創造したのだとはいえ、その男に込めた私の想いは私だけのものであり、男のものですらないのだ。
身じろぎひとつせずに。
幾星霜その門を見下ろしながら。
門碑の詩を書いたのだと言われながら。
右肘を左膝に乗せるという窮屈な姿勢で。
まさか夕飯のメニューを考えているのだ、などとは誰一人として思うまいよ。
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