過去編【絶級ティーチャー】その①

【絶級ティーチャー】

 〈Spring vacation for elementary school sixth graders〉


「長セリフに憧れないかい?

 少なくとも私は憧れる。だからやってみることにしたんだ。さあ、まずは、この長セリフを始めた記念として自己紹介をしておこうかな?

 私の名は庵内湖奈々。

 満を辞さずに登場した、限りなく全能に近い生物。そして、かわいい高校二年生だ。

 まあ、紅くんから色々と既に聞いてるだろうけど、今回は飛ばさず省略せず簡単にせず手短にせずに話したいと思う。

 薙紫紅、巫槍、そして私に起こったあの事件を。

 なあに、よくある話だ。

 君たちの想像通りに進むよ。多分。



 今回は章変え無しだ。何せ全てセリフだからね。

 二段改行するから許しておくれよ。

 さあ、それでは始まり始まり、とはいかないな。さっきので自己紹介を終えてしまっては、何がなんだかわからないからな。でもこれはそれこそ手短に行こう。



 庵内湖奈々は全知ではないがほぼ全能だった。

 何故全知でないかと言うと、私はまだ17歳だからだ。

 何故全能でないかと言うと、私は心が読めないのだ。

 これは罰なのか。

 私は一度本当の全能になりかけた。だが、ルール…最強の存在を許さない世界の掟に触れてしまい、心を読む能力を没収されてしまった。

 気がついたらなくなっていた。

 まあいらなかったけどね。

 で、だ。私はそれ故に『ある程度』人生が楽しかった。全能に近い故にこの世に絶望して自殺したくなるとか、そういうこともなかった。

 しかし、暇だった。

 そう、私は趣味を作ることができなかった。

 争いには勝ってしまうし、芸術とか奥の深い物も肌に合わなかった。

 新しい知識で喜怒哀楽するのは楽しいが、それは一瞬だけのことだ。趣味や義務がないのは辛かった。

 学校もやめた。確率操作で宝くじを当てまくって、とっとと自立した。しかし豪遊の楽しさも一瞬のことだった。

 私は暇していた。

 だから、探すことにしたのだ。

 私はとことん私の知らない物を探すことにした。

 一瞬も、集まれば数瞬になる。もちろん数瞬で我慢するつもりはなかったが、とにかく私は旅に出た。

 あえて能力を使わずに、自分の足で。

 私はそのうち『疲れ』や『出会い』を知ったが、慣れてくると感動しなくなった。

 そんな時だった。

 私が、『ダーク・バランス』という存在を見つけたのは。巫槍かんなぎつらぬきという少年を発見したのは。

 彼はアフリカのある集落にいた。

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