第零話【達成使いは夢を見た】その⑧
〈2568-2〉
担任の激励で怒りを忘れそうになった。
だから、仕切り直し。俺はまた駆けだした。
2人。先生はそう言った。(もちろん嘘の可能性もあるが、まあそれを考えたらキリがないからとりあえずそこは無視するとして)生徒指導室の先生は2人いるらしい。
俺はとにかく走って、走って走って走って、南棟の三階にある生徒指導室についに辿り着いた。
走っている途中に時破田に連絡を入れたが、電源を落としているのか繋がらなかった。
よし。
「…ふぅううう」
とりあえず深呼吸をする。何を隠そう俺は、結構臆病だったりする。戦い慣れてはいるが、痛みには慣れないのだ。
心底怖い。もし腕を落とされたら、もし足を切断されたら、そういうことを考えると本当に怖くなる。何を隠そう、俺の達成『マゼンタ・エモーション』は命を守ってはくれるものの、命以外は守ってくれない。
「…よし」
でももう落ち着いた。大丈夫。
本気で戦えば、多分大丈夫。
「失礼します!!!!!!!!!!」
ドアを蹴破る!だがしかし!そこには誰もいない!
破壊されたドアに驚く者もいない!
「うっそだろ…」
さっきの覚悟はなんだったのか。生徒指導室に来いとはなんだったのか。誰もいない。
俺はそう思った。しかし、でも、もしかしたら誰かが潜んでいるかもしれない。その可能性は十分にある。
俺は叫ぶ。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
しかし、反応はない。俺は、焦ってきた。
何度でも言ってやる。
達成があれば絶対に死なない。
しかし達成使いは決して最強ではない。
「…もういやだ」
なんでこんな、こんなことをしなくちゃならない。せっかく怒って飛び出してきたのに、なんでいないんだよ。
そんなことを考えている時だった。
俺に雨粒が当たった。
「…え?」
雨漏り。そのうち、ぼたぼた、と天井から雨が降ってきた。雨粒は地面に落ち、文字を作る。
『それでもクリムゾンかよ』
『バーカ』
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