プロローグ【封印ラジオ】その③
〈1-1〉
ラジオ。ラジオをご存知だろうか。
そう。ラジオである。
まあ最近はラジオは廃れたらしいが、
それでも全く知らないということはないだろう。
そのラジオ。レィディオで、最近、不可解な現象が起きているらしい。なんでも、ある放送局で関係者の誰も知らない番組が流れているとか。そしてそれがラジオの構造的にあり得ないことから、ついに、解決してくれと警察から電話があった。
「こりゃあ異能事件だ」
熟年の警官、うちのすぐ近くの駐在所に寄生している俺の知り合いのおっさんは俺の目を見てそう言った。
「まあ、そうかもしれないですね」
「大事件だぜ…腕が生る」
「生えてくるの…?」
このおっさん、名前は鈴木。前に一悶着あって、最終的に俺に協力してくれる唯一の警察になった。そう、警察から電話があったのは俺じゃなくてこの人。
この人は、俺と対等に話せる数少ない人間だから。
クリムゾンの呪いも含めて、たくさんの力のせいで人々から怖がられる俺に対して、普通に話せる数少ない人間。
俺は少なくとも人生のうちで10000人以上人に会ってきたが、そういう特殊な人間はまだ6人しか知らない。
「…でも、なんで異能だと?」
「さあ…でも、上層部が手に負えないって…」
「へえ」
「人間ってのは理解できない物を不可思議な物と思いたがるからなぁ。実際は天才的なエンジニアが犯人かもしれないが、上の人達は怖がり屋だから。とりあえずお前に押し付けるんだろ」
「…」
「まあ、でもいいんじゃないか。あの『庵内』とか『巫』とかを相手するよりよっぽど」
「まあ、それはそうですね…」
プロローグだからこんな説明の仕方が許されるが、庵内と巫のことは気にしなくていい。さっき言ってた神のような能力者ってだけだ。以前に俺が倒した奴ら。と同時に、俺のトラウマでもある。
さて、俺達はさっそく駐在所を後にして調査に乗り出した。外に出ると、桜が綺麗だった。なるほど、花見で酔っ払って踊りまくる人みたいに、能力者が浮かれて放送をジャックしたのかなとも思った。
「じゃあ、どこから調査すっかなー。紅、任せた!」
「任せられるのは良いですけどね。でも、俺もどこをどう調査すりゃいいのかなんてわからないですよ」
わからなくても、どうせ巻き込まれるから。
それに、事件だらけの毎日、
探偵スキルなんて学ぶ暇なかった。
「んじゃさ、とりあえずラジオ局に行こうぜ」
「はーい」
てくてくてく。
可愛い擬音だな。次期高校生とおっさんの足音なのに。
ラジオ局についた。
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