プロローグ【封印ラジオ】その②

 〈52-5〉

 でも。

 悪魔というのはあくまで俺のする所業の話で、俺が悪魔族というわけではない。悪魔族なんてものが存在するかは知らないけど。…いや、多分いるのだろう。俺はそうじゃない。

 というか、悪魔とか悪の味方とか、あんまりさっきのくだりは気にしないでほしい。とくに深い意味は…あるが、別にそれは俺の今日の一日を見ればわかることだから、別に今は忘れていただいて構わない。

 では俺の今日を見ていただく前に自己紹介をさせてくれ。知らない奴の日常ほど見ててつまらないものはないからな。わかるぜ。

 俺の名は〔薙紫 紅〕。読めた?

 なぎし くれない だ。主人公にして語り部。

 え?メタい?いやいや、プロローグだからこんなもんだろ。っていうかメタいのは俺もあんまり好きじゃないし、これからは絶対にしないから安心してくれ。保証はないけど。

 自己紹介に戻ろう。戻るまでもなく自分語りをしてるような気もするが、とりあえずテンプレ自己紹介をしよう。

 薙紫紅、今年から高校生。(今は春休み)。

 好きな食べ物は甘い物。

 嫌いな食べ物は辛い物。

 趣味は。する暇がない。

 好きな人達は。うん。いるにはいるけど。

でも、わかりやすい人達はどこかへ行ってしまった。というか、死んだ。俺は小学五年生の時に、両親と妹を亡くした。

 別に同情してほしくて言ったんじゃない。これはあくまで自己紹介なんだから。でもこれが俺だ。

 俺は寂しい。

 俺は強がったりしない。

 俺はある『魔法』を抱えている。

『クリムゾン』。これは負荷能力と言って、魔法の才能が無くても常時発動している、呪いのような物だ。

 効果は一つ。《事件に巻き込まれる》。五歳の時から一日2回ずつ、俺は最低でも殺人事件、最高で神のような能力者の野望に巻き込まれて来た。まあこの設定には若干の誇張があるけど我慢してくれ。

 その辺も本編で丁寧に紹介するから、ちょっとだけ覚えてくれればそれでいい。

 今日の一日、それには二つの事件が伴う。

 では自己紹介も終わったところで、

 俺の、俺たちの物語は始まる。

 …いや、これは、始まる少し前の話。

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