に。
それはクリスマスも近いある冬の日の放課後。我らがサッカー部顧問の茂ちゃんに呼び出されていた俺は急いで教科書を鞄に詰めていた。支度を終え、教室を飛び出した瞬間、「風見、」と、声がかかった。今日ばかりは鬼の茂ちゃんが待っているので明日にしてもらおうと思ったのだけれど、そこに立っていたのが谷川だったからびっくりして立ち止まった。図書館も、俺が一方的に行って教えてもらっているだけだし、谷川にまともに話しかけられたのはこれが初めてだったのだ。
「…谷川?!ど、どうかしたのか?」
「いや、ちょっと頼みごとがあっ…「章悟ー!なにやってんだよ、茂ちゃん怒ってんぞ!」うわ、まじか。…てか拓也、恥ずかしいからそんな大声で叫ぶなよ…。それでも今は谷川の方が大事だ。こんなチャンス、またとないかもしれないし。「ごめん、急いでるよな。」「いや、大丈夫。それで?」「あのさ、今市立美術館でやってる展覧会のチケット2枚もらったんだけど一緒に行かない?」
正直、絵画に興味はない。でも谷川に誘われたという事実がめちゃくちゃ嬉しい。「ごめん、興味ないよな、絵とか…。」「…行く。」「え?」「行きたい!…俺で良ければだけど。」そう伝えると、谷川はほっとしたように微笑んだ。谷川は普段ほとんど笑わないやつだからそれを見られただけで俺も自然と笑顔になった。…まあそのあと茂ちゃんに怒鳴られたのは言うまでもないけど。
俺の好きなやつ。 みや @miyako107
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