第11話 C案

 雑誌はそろそろ秋服の特集になっている。

 春と秋は着る服に困るというけれど、ちょっと解る。

 でもこの時期の化粧品のポスターや雑誌の表紙は【秋色】になっていて、私はそれが結構好きだ。

 東北は雪が降ってしまうと色々大変だし閉ざされた感じになってしまう、その前の小休止というか短い期間の過ごしやすい気候がとても貴重に思える。


                 〇


 毎月発売されるアイドル雑誌の表紙が押しグループだったので勿論買った。その号は恋愛論を語るテーマだった。

 メンバーが一人一人、が、あらかじめ用意された五つの質問に答えて、そのあとで総評的な事を語るといった形式だ。

 五つの質問には【女の子を守ってあげたくなる仕草は?】や【クラスメイトに恋をしました、告白する?】や【異性にときめくのはどんな時?】等ファンとしては興味を引く内容だ。

 質問に答える各メンバーのコメントが性格を表しているようだ。

 もしくは、こういったインタビューからメンバーの性格を知る・読み解くのもファンの大事な行動なのか。メンバー全員の恋愛論を読む。


 彼らのコメントから、恋愛はあって当たり前、というより【自然にあるもの】という印象を受けた。

 この発見は私の中で小さな衝撃だった。私は今までそんな風に感じて生きてこなかった事に気づく。


 今の自分の状況で例えると、職場で気になるメンズが居たとしても「仕事だから」と、自分の感情をらすだろう。

 友達の友達と合同で遊んだ時に、ちょっと惹かれるメンズが居たとしても「きっともう好きな人がいるだろう(自分には無いけれど、他人に恋愛要素は常にあると思っている)」とか、「自分には到底無理だ」ってずっと目をらしてきたなぁ。


 恋って特別な物で、自分には過ぎたものだと思っていた。

 けれどもアイドルのコメントを読んだら、そうじゃないんだなって思った。

 どうだろう。ここ最近で、本当はときめいた相手って居たっけ?

 この間のライブの打ち上げで話した男の子に、本当はもっと近づきたいと思っていた。

 初対面であんまり馴れ馴れしくするのは美しくないと思っているから、誰とでも平等に接するようにしている。

 けれどもアイドル達はきっと、仕事上それこそ「平等に」振る舞わなくてはならない状況だろう。

 その中で世間に、私たちファンに気づかれないように恋の実を育てているのではないだろうか。


 先日観たライブDVDの【まるでそこに恋人が居るかのような甘い場面】演出で見せたアイドルの目は、演技だけで表現出来るものではないと思った。

 アイドルとして、私たちファンに夢を見せてくれる為にも、彼らに恋は必須なのではないだろうか。

 そしてそれを受け取る私たちも、美しくありたい。

 あの時感じたキュンとした心を認める事から始めれば……いいのかしら。


                〇●〇

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