第5話 アイドルに会いたい●B案

 アイドルに近づく為にフロー作成をした。アイドルと接点のある業界に入るのが良いのではないかと。どの業界に入るか、どうしたら入れるか、幾つか検討してみる。


                ○●○


 B案●音楽業界。

 自分が作った曲がアイドル主演のドラマ主題歌になると会えるかも!

 もしくは【そういう人】と仲良くなる(他力本願)

 しかしバンドだとメンバーが必要なので、ピアノは? 一人でいけるのではないか。

 ……まずはピアノを買う資金からだ。

 私は会社に相談して副業の許可を得た。期限付きで。


                 ○


 選んだバイトはライブハウスのスタッフだ。物凄く良い選択だと思う、音楽業界の事も知れるのではないかと密かに期待している。

 普段ライブハウスに行かない私が何故採用されたのか、自分でも驚きだ。

 多分募集内容を見た感じ、応募する人が少なかったのではないかと推測する。主に土日出勤だったからだ。

 私は土日休みなので副業としては丁度良かったし、この業界の生の現場も知れるし一石二鳥ではないか。

 念の為バイトに行く前に、アイドルのライブDVDをチェックしてから行こう。丸っきり初めての業界に行くのだ、少しでもヒントがあるかもしれない。


                 ○


 バイト初日は勿論緊張した。市内の繁華街から少し外れた所にある市内で一番広いライブハウスだ。何年か前、友達と一緒に来た事がある。

 階段を上り、二階がライブ会場になっている。階段を上る間、妙などきどき感が生まれる。

 ライブハウスの店長とPAとスタッフに挨拶をした。……三人だけ? この広いライブハウスを三人でやっているのか。出だしから違う世界だ。


 最初の仕事は掃除だった。会場やトイレや控室等、全ての場所の掃除だ。

 そういえば会社でも、現場に配属されて最初の仕事は掃除だった気がする。

 確かに、掃除の手間を少なくしようと思えば、出来る限り綺麗に使う。そういう事か。

 ライブハウスには色んな所にバンドのステッカーが貼ってある。

 女子トイレにもたくさん貼ってあった。バンドの人って男の人のイメージがあるけれど、男子メンバーが女子トイレに入って貼ったのかな。お客さんが帰ったあととかさ。


 掃除が終わったあとは、ライブについての説明があった。一通り全体的な話を聞き、なんとこのあとライブがあるらしい。

 春なので、大学生の新歓ライブがよくあるそうだ。今日は初めてなので、見ている、という仕事。必要ならば補佐的な事をする。


                 ○


 さすがに初日は疲れた。

 アイドルが表紙の雑誌が今日発売なので、買って帰った。これで癒されよう。

 私の推しメン一条君のインタビューが載っている。

 女性の体の部位で好きな所は? とストレートな質問だ。

 一条君の答えは、一位・脚。二位・胸。三位・くびれ。

 バストが弾むと会話も弾むよね、とコメント付きだった。

 私は軽く落ち込んだようだ。弾むバストを持っていないからだ。

 そうか、一条君は弾むバストが好みなのか。バストアップの術を検索し、こっそりやろう。


                 ○


 ライブハウスでバイトを初めて数ヶ月が経った。

 ほぼ毎週イベントが入っていた、私はドリンクを担当したり受付の補佐をしていた。勿論掃除は毎回やっている。

 此処で見るライブは、DVDで見るライブ映像と違うなぁ。

 アイドルのライブはファンの事を考えてファンの為に! って感じがするけれど、此処はそうじゃない。

 お客の為に、じゃないのなら誰の為に? 聞かれたら答えられないけれど。


 ステージで演奏するバンドを見ていると色んな感情が沸く。

 アイドルのライブは愉しいとか幸福な感じがするけれども、ここで見るバンドはそうじゃない。どちらかというと、もう少しダークな印象だ。

 人間の根底にある何かに訴えかけるような、葛藤とか劣等感とかそういう感情を叫んでいるように感じる。

 そのようなライブを見たあとは、何処か感情が解放された気分になる。

 こういうのをカタルシスというのだろうか。


                  

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