innocent timbre
安里紬(小鳥遊絢香)
プロローグ
藤原琴音、二十二歳。私は極度の人見知りで、小さな頃から人と話すことが苦手だ。
女の人も男の人も関係なく、人を前にすると緊張して頭の中が真っ白になってしまう。自分の顔が真っ赤になっていくのが分かるから、それだけでも恥ずかしいし、何を話せばいいかも分からない。
小さな頃は一生懸命友達を作ろうとしたし、話の輪に入ろうと努力もした。
でも、皆の話のテンポについていけず、何も言うことができずにその場が終わるなんてことが常だった。皆の中にいると、一人でいる時よりも孤独感が強くなる。
そして、小学校高学年の頃にはほとんどの時間を自分の席で本を読んで過ごすようになった。
本を読んでいる時は、本の世界に飛び込んでいて、現実の世界に私はいなくなる。現実の私では絶対にできない行動や持つこともない思考。まるで、自分が自分ではなくなる経験ができる。だから、本が大好きだ。
そんなこともあって、私は短大を卒業後、ずっとバイトをしていた本屋に就職した。まったく人と関わらないというわけにはいかないけど、本が好きな私にはこの仕事しかないと思ったのだ。
面接でしどろもどろになっている私を優しい目で見守ってくれ、私の本好きを汲み取って採用してくれた店長さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいで、仕事でもって恩を返さなきゃと思っている。
そんな静かな私の日常に颯爽と風を吹かせて現れたのは、静かな空気を纏う大人の男性だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます