遠距離

遠距離恋愛。


ネットで調べてみると、「なかなか会えない距離」なら遠距離恋愛になるらしい。

なら……

俺達は遠距離恋愛をしている。



俺達は昔から一緒に遊ぶ、幼馴染というやつで。

互いに意識し始めるのも遅くはなかった。

中学の時から意識をし始めたが、付き合い始めたのは高校の時。

俺から、好きだ、と伝えた。

彼女も、好き、と答えてくれた。

付き合い始めたと言っても昔から一緒にいたから関係が激変する訳もなく。

普段通りの日常の中で、胸が少し苦しくなる程度の変化。

それでも……

その苦しさは、心地よかった。


会えなくなったのは高校2年生の終わり。

家が隣だからいつも一緒に投稿していたのに、ある日彼女が先に行ったり、遅れたりするようになった。

クラスまでは一緒ではなかったから、会える機会がかなり少なくなってしまった。

なかなか会えない距離。

遠距離恋愛の始まりだった。


俺はとりあえず、理由が聞きたかった。

だって急すぎたから。

俺が何かしたのか?

普段通り、何も無かったはず。

何がいけなかったのか。

全くわからなかった。


私だって、急すぎたって思ってる。

でも……

彼が何をしたか、ではない。

彼が何もしない、からだ。

私だって、心配になる。

私の事、好きじゃないのって不安になる。

だから……

いじわるをした。

押してだめなら引いてみる。


くそっ、なんだってんだ……

もう1週間も話してない。

なんでなんだ。

俺の事、嫌いになったのか?

だったら正面から言ってくれればいいのに……

とりあえず、話したい。

話さなきゃ、何もわからないじゃないか!

俺は放課後、無理矢理彼女の家に行くことにした。


ピンポーン

「はーい」

「あ」

「あ。」

「ちょ、ちょっと待てって」

「……」

「待てよ!」

「は、離して!」

「俺は!!お前のことが!!大好きだ!!」

「えっ……」

「俺には!!その想いしかないから!!全力で伝えることにしたんだ!!」

「……」

「俺の事が嫌いになったのならそれでもいい。お前の気持ちを変えることなんて俺にはできない。でも……」

「……」

「でも……俺は!俺のこの想いは!!絶対変わらないから!!」

「……」

「それだけ、お前のことが!!好きだから!!」

「……なによそれ」

「えっ?」

「なによそれ……反則じゃない……」

「……」

「私が!あんたのこと!嫌いになる訳ないじゃない!!」

「……」

「あんたが!何もしないから!もう私の事好きじゃないのかなって、不安になって、それで……」

「……ごめん」

「謝ってなんて欲しくない!……好きって証明して」

「……えっ」

「証明して!!」

「……」


俺は彼女をそっと抱きしめた。

溢れる好きを、感じた。


「ハグ、だけじゃ、足りない」

「俺も、そう思ってた」

「んっ」


そして優しく、口付けをする。

彼女が愛おしくてたまらない。

絶対に離さない。

絶対に幸せにする。

そう、誓った。


「で、なんだったんだあれ」

「あのーそのー……押してだめなら引いてみるってやつで……」

「あっ、そう……」

「いやー、ごめんね?」

「結構、寂しかったけどね」

「ごめんって~」

「遠距離恋愛してた気分」

「そう考えるとすぐ会える距離にいるって幸せよね」

「そうだな、すぐ会いに行けて幸せだよ」

「私も幸せ~」


近くに住んでいても、心の距離が遠かったらきっと遠距離恋愛になる。

一方的な好き、よりも、互いに好き。

俺は、好きをしっかり伝えていこうと、決めた。


「なぁ」

「ん?」

「大好きだよ」

「うんっ私も大好きだよっ」

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