後悔

あぁ

結局俺は

ただ見ていることしか

出来なかったんだ。



俺が高校入ってすぐのこと。

入学式後はクラスの中で自己紹介が行われ、はじめのうちは席が近い子とよく話すものだ。

俺は右側の一番後ろ、つまり廊下側の1番後ろの席だったから、周りには3人しかいなかった。

俺の前と俺の隣は女の子だった。

俺の斜め前は男だった。

俺は積極的に話すタイプだったので、斜め前の男に声をかけた。

彼は最初はおどおどとしていたが、だんだんとほぐれていき、すぐに仲良くなった。

ちょうど、仲良くなって話が弾み出した頃に女の子立ちが会話に混ざってきた。

2人とも、喋る方で会話は盛り上がった。


その頃からかもしれない。


それは一目惚れに近いような

運命を感じるような

そんな気分


はじめは「好き」なんて感じなかった。

ただ、いいな、としか思っていなかったはずだ。

話していて楽しい、顔も可愛い、性格も良い。

毎日が楽しかった。


「好き」を意識し始めたは入学してから1ヶ月後。

クラスメイトの1人が彼女を作った、という話を聞いた時。

ふと、思ってしまったのだ。

あの子と、付き合いたいな、って。


その時から、多分、俺の「好き」がはじまった。

いや、「恋」と言ってもいいかもしれない。


純粋にその子が好きで、その子と話すだけで緊張して。

彼女の前だと自分というものを忘れてしまうほど、おかしくなってしまう。

「恋」は病気だった。


月日は流れゆく。

気づいたら夏休みが終わっていた。

夏休みの間は、クラスの集まりで2回ほど彼女と会った。

私服姿は眩しくて、じっと見てられなかった。

だから彼女との会話も、あんまり盛り上がらなかった。

夏休みが終わってすぐ、席替えがあった。

残念な気分が心の全てを満たすと思っていたのにほんの少しだけ、安心した気持ちがあった。


彼女と関わり合いたいのに、関わり合いたくない。


後者の気持ちが増していくのに、そう時間はかからなかった。


いつしか彼女と話す機会は無いに等しくなった。

ただ遠くから見ているだけで満足している自分がいた。

クラスメイトの彼女が出来た話を聞いてもなんにも思わなくなっていた。

「好き」を、「恋」を、先のステップへ進めようとはしなかった。


高校2年生になった。

彼女とは別のクラスになった。

そして俺は気づいた。


何故俺は何もしていないんだ?


そばにいなくなってから気づくもの。

そこにはあった。


クラスが変わると関わりがなくなる。

本当にそうだった。

隣のクラスにいくこじつけを無理矢理作っても彼女と話す機会は得られなかった。

当たり前だ。

1年生の夏休み明けから全然話していないじゃないか。

自分のせい、だからと言って自分の責めてもこの現状は変わらない。

変わらないこの想いしか、俺には無い。


夏休みも、冬休みも、彼女と会う機会はなかった。

そのかわりに、俺の想いは日に日に増していった。

増していくとどうなるか。

廊下ですれ違うとすごく緊張して、避けるような行動をとってしまう。

結局自分からチャンスを潰していく。

もう、重症だった。


こんなにも好きなのに

こんなにも恋をしているのに


何故彼女を避けてしまっているのか。


告白することだって考えた。

妄想しただけで心臓がばくばくで、破裂しそうなくらい苦しくて。


ラブレターだって書こうとした。

1文字書いてはまた消し、1文字書いてはまた消し、永遠にその繰り返し。


まずは話しかけるところからと思った。

妄想しなくても、現状避けているのだから無理だ。


そんな時

追い打ちをかけるように

彼女に恋人ができたことを知った。


悲しかった。

いや、本当に悲しかったかと言われれば怪しい。

ただ、あぁ、と。

そう思っただけ。

いつその噂が来てもおかしくない可愛い子だったから、いつかそんな時があるだろうなと思っていた時があった。

それでも。

俺の「好き」だという気持ちは変わらなかった。


高校3年生ももう、終わりが近い。

何も変化せずに1年が経った。

変化したことといえば、彼女が恋人と別れたらしいことぐらい。

あれは確か、冬休み前のことだったか。

彼女から別れを言い出したらしいとか。


まぁ、俺には関係がない。


卒業式の日。

彼女ともう、会えなくなる日。

告白しようか、そう考えた時もあった。

でもこんなめでたい日に、変な気を使わせるのも申し訳ない。


俺の気持ちは俺の中で終わらせる。

きっと後悔なんてしないはずだ。

後悔は、2年前から既にしている。

最後も彼女と話をせずに、ただ去った。


卒業式から次の日。

俺は自分の部屋で泣いていた。

泣こうと思って泣いたわけじゃない。

自然に涙が、出てきた。


後悔なんて、しない。

そう思っていたはずなのに。


この胸を締め付ける苦しみはなんなのだろうか

この心を満たしている「好き」はなんなのだろうか


この、後悔は、なんなのだろうか


俺はただ、小さな声で、

好きだ。

と、そう呟いた。


想いは止まらない。

「好き」は、涙は、止まらなかった。



俺は勝手に初恋をして、失恋した。

想いを伝えること、その大切さを知った。

自分の中で完結させることにいい事なんてない。

自分のために、行動すること。

後悔しない選択を。


きっとその行動の後に、幸せが待っているから。

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