はじまり

[佐藤悠基]

〜図書室にて〜

今日ははじめて石川さんが部活に来る日、か。

昨日のぎこちない会話のせいで変に緊張するな………。

まぁ、でも、嬉しい気持ちもある、かな……。

いやいや、何言っちゃってんのかな?この男は!?

そういうのはなしにしようって昨日家に帰ってから決めたよね!?はぁ……一応部長だししっかりしなきゃ……。


[石川実里]

〜図書室前の扉にて〜

はぁぁぁ、今日ははじめての部活、かぁ……。

なんかいつもは普通に隣に座れたけど、って、普通に座ってたのもおかしいけどね……まぁおいといて、今日は隣に座れない気がするなぁ……。

やっぱり緊張してるのかな……。

このまま疎遠になるのも嫌だし、やっぱり関係を進めなきゃ、だよね……!


[佐藤悠基&石川実里]

〜図書室にて〜

「しっ、失礼しますっ!」

「あっ、えっと、ど、どうぞ……。」

「あっ、すいません、ありがとうございます……。」

『………………』


[石川実里]

やばいやばいやばいぃぃぃぃっっっっ!!

どこ座ればいいんだろっ!?どこ座ればいいのっ!?お願い神様っ!一生のお願いだからぁぁぁぁ!!

佐藤、君、すごい困った顔してるよ……。

これは、意を決して佐藤、君の前に…………って、ちょっとまってぇぇぇっ!?彼のっ、顔っ、がっ、見えちゃうっっ!!わたしのっ、顔もっ、見えちゃうっっ!!落ち着け落ち着けぇー……。

よし…………隣に座ろう。


[佐藤悠基]

なんか石川さんすごい困った顔してるんですけどぉぉぉ!!

というかあたふたしているような……?っと、まあおいといて、これはどうするべきなんだ!?

いつもの様に隣に座るのかと思っていたけど今図書室は僕達の2人だけだし、はじめての部活だから説明とかあるのかなって石川さん思ってて僕の前に座ってくるかもしれない……。

よし、石川さんに委ねよう。


[佐藤悠基&石川実里]

「えっと、じゃあ、失礼、しますね……?」

「あっ、はいっ、ど、どうぞ……。」

『……………………』


[佐藤悠基]

やっぱり隣なんですねぇぇぇ!!!


[石川実里]

隣が落ち着くぅ…………。


[佐藤悠基&石川実里]

「あっ、えっと、やっぱり、僕の隣……なんですね」

「あっ、すいません、いつもの感じで座ってしまいました……。」

「特に部活の説明とかないので、大丈夫ですよ。」

「あっ、そうなんですね……。」


[佐藤悠基]

はぁぁぁ……。

やっぱり緊張する……。

全然本の内容入ってこない……。

帰宅のチャイムまで、あと1時間くらい、か……。

少し居心地がいいと感じるこの気持ちはなんなのだろうか……。


[石川実里]

はぁぁぁ……。

やっぱり落ち着く……。

でも前みたいにちらちら彼の顔が見れない……。

でも見ちゃう!

あぁぁでも見れないぃ……。

でもでもぉぉ……。


18時00分 帰宅のチャイム


[佐藤悠基]

長かった……。

人生で1番長い1時間だった……。

これから放課後は毎日この状況なんだろうか……?

ちょ、ちょっと鬼畜じゃないですかねぇぇ!?

なんとかして打ち解けるべきなのでは……。っと、とりあえず部活終わらせなきゃな……。


[石川実里]

結局ずっと、ちらちら彼の横顔を見てた気がする……。

しょうがないよね!私、色々変な行動しちゃった気がするから彼の反応気になっちゃうもんね!

でも……何だかずっと深刻そうな顔していたような……。

もしかしてあんまり良い印象じゃなかったのでは……?って、ダメよ私!前向きに頑張らなきゃ!!


[佐藤悠基&石川実里]

「チャイム……鳴りましたね。」

「あっ、はい、そうですね……。部活、終わりですか?」

「はい、戸締まりだけきちんとして終わりになります。」

「わ、分かりました、では私はあちらの窓を見てきますね。」

「すいません、ありがとうございます。」


[佐藤悠基]

このまま帰宅、か……。

外はまだ雪が降ってるのか……。

というか外かなり暗いし……。

一緒に……帰るべきなのかな……?って何考えてるんだ僕は!?いやいやいや、いやらしい気持ちはないよ!?男としてね!男としてやるべきなのではないかと、ね!ほらほら!少しは打ち解けられるかもしれないし!わんちゃん!


[石川実里]

はぁぁぁ……。

部活終わっちゃったな……。

なんだかいつも以上に一瞬だった気がする……。

もっと一緒にいれないかなぁ……。

一緒に帰れたり、しないかなぁ……。


5分後


「では、帰りましょうか。」

「そうですね、帰りましょう。」

「つ、つかぬ事をお聞きしますが……石川さんの帰り道って駅方面ですか……?」

「えっ、あっ、えっと、はい、そうですね……?」

「では……もし良かったら、一緒に帰りませんか?」

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